研究課題/領域番号 |
18K02801
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研究機関 | 東海学院大学 |
研究代表者 |
池田 敦子 東海学院大学, 人間関係学部, 教授(移行) (00750308)
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研究分担者 |
高橋 智 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183059)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達障害 / 知的障害 / 大学教育 / 学生支援コーディネーター |
研究実績の概要 |
近年の障害学生支援は法的な背景により推進され、特に発達障害学生の支援数は増加している。中でも、知的障害学生の在籍は全国障害学生支援センター「大学案内2020障害者版」の調査によると、国内私立大学において根拠資料のある知的障害学生が在籍している。同センターの調査の経年的結果では、知的障害学生が受験可能の国立・私立大学数は年々増加し、受験者数の割合も増加している。独立行政法人日本学生支援機構の調査では、知的障害は精神障害「その他」でカウントされ実数は明確になっていないが、知的障害学生の受験者数増加と大学進学率から何らかの入試形態により入学し、実数は調査回答より多いのではないかと推測するが、発達障害学生と比して知的障害学生の学びの実態や支援の実際は全く明らかになっていない。 米国の知的障害者向け大学プログラムのWEB調査から、特徴的な州立大学・私立大学10校の知的障害者向け大学プログラムをピックアップした。各大学は州立・私立の総合大学で、各大学の知的障害者向け大学プログラムは非学位であり、修了時に大学プログラムの修了証明書が発行された。プログラム内容は、①大学生活の基礎として自立と日常生活のスキル、②アカデミックな学習、③職場とコミュニティのスキル、④インターンシップ、などを骨格とした。知的障害者向け大学プログラムの参加条件としては、学ぶ意思が明確であり、将来の社会的自立に向け支援を受けながらの自立的生活が求められ、メンター制度等により安定した大学生活を送っていた。 高等教育先進国では、発達障害・知的障害青年の長期的発達支援として大学における特別プログラムが展開されている。北米・北欧諸国の大学での発達障害・知的障害学生プログラムにみられる事例のように、発達障害・知的障害者が生涯にわたり成長・発達し、社会参加の可能性を広げていくためには大学・高等教育保障は不可欠である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は主に、文献研究、WEB調査、北欧調査研究の論文執筆を行った。学会の報告は『日本発達神経学会9回学術集会ポスター発表』(WEB開催)にて発表を行った。 文献研究、WEB調査検討は以下の3点について行った。①日本の大学における発達障害・知的障害者の大学教育の実態では、日本の大学教育における知的障害学生の実態を全国障害学生支援センター「大学案内障害者2020年度版」の調査内容の回答をもとに発達障害・知的障学生の受け入れや在籍数、その基準、支援実態について文献・WEB調査検討を行った。②米国における発達障害・知的障害者の大学教育の実態の動向では、米国の知的障害者向け大学プログラムのウェブ調査を通して、特徴的な州立大学・私立大学10校の知的障害者向け大学プログラムをピックアップし、知的障害学生の在籍数、学修プログラム、学位・単位・修了証の授与とその支援について文献・WEB調査を行い、日本発達神経学会9回学術集会にて発表した。③カナダにおける発達障害・知的障害者の大学教育の実態の動向では、カナダの代表的な、オンタリオ(Ontario)州、ケベック(Quebec)州、ブリティシュ・コロンビア(British Colombia)州、アルバータ(Alberta)州の4州をとりあげ、大学における発達障害学生・知的障害学生の在籍数、学修プログラム、学位・単位・修了証の授与とその支援について文献・WEB調査検討を行った。 また、2019年度に訪問調査を行った、北欧諸国における「北欧福祉国家における子ども・若者の特別ケア」研究チーム(代表:髙橋智日 本大学教授・東京学芸大学名誉教授)による北欧福祉国家の取り組みを事例に、多様な発達困難を有する子ども・若者の発達支援・特別ケアのあり方についての調査・検討を、発達困難な若者の動向と進路その支援について論文としてまとめ投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、近年の障害学生の増加や2016年4月の「障害者差別解消法」の施行を背景として、障害学生の実態把握や支援体制の整備が推進されているが、その中でも、発達障害学生増加は著しい。引き続き先行研究を行い、調査研究としては以下の4点に取組む。①国内の4年制私立大学(613校)・短期大学(308校)の障害学生支援室等に対して、発達障害・知的障害およびそのボーダーライン・グレーゾーンの学生の受け入れ・在籍数、その基準、支援実態について質問紙法調査の実施②療育手帳B判定程度の発達障害・知的障害青年を対象に、大学進学ニーズについての聞き取り調査を行う③ 北米・北欧(米国・カナダ)の大学における発達障害学生の受け入れ・修学に関する動向調査 ④北米・北欧の大学における知的障害学生の受け入れ・修学に関する動向調査を通して、日本の現状と北米・北欧(米国・カナダ)との比較検討を行い、発達障害・知的障害等の心身において多様な発達困難を有する学生の支援と彼らが生涯にわたり成長発達し続ける力を育むために、大学教育はどのような機能・役割があるのか、そのための支援体制のあり方などに関して総合的に検討する また、北欧諸国(スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウエー、アイスランド)における発達障害・知的障害青年の大学教育や国民大学における生涯学習・特別プログラムに関する訪問調査を実施し、日本における発達障害・知的障害青年の大学への受け入れ・支援体制の構築に関する示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍のため発達障害・知的障害の学生が在籍する大学への訪問調査、海外での訪問調査、学会等の参加を行うことが困難であった。 次年度も、コロナ禍のために国内外の訪問の調査は難しい。そのため、オンライン等の活用での聞き取り調査や、国内の4年制私立大学(613校)・短期大学(308校)の障害学生支援室等に対して、発達障害・知的障害およびそのボーダーライン・グレーゾーンの学生の受け入れ・在籍数、その基準、支援実態について質問紙法調査の実施を計画している。併せて、療育手帳B判定程度の発達障害・知的障害青年を対象に、大学進学ニーズについての聞き取り調査を行う際の謝金等として計画している。
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