研究課題/領域番号 |
18K02809
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
半澤 礼之 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10569396)
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研究分担者 |
宮前 耕史 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30584156)
浅井 継悟 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40776655)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域間移動 / 適応 / 時間的展望 |
研究実績の概要 |
2021年度は,本研究課題の目的のうち「地域間移動」に焦点をあてた研究について,日本教師教育学会第31回研究大会で「地域間移行を経験した初任教員の環境適応と時間的展望-大学4年生から教員1年目にかけての縦断的な事例検討より-」というタイトルで報告を行った。 この研究は,大学を卒業して教師として就職するにあたって,都市部から地方部へと「地域間移動」した者を対象にして行われたインタビュー調査である。この調査は縦断調査であった。はじめに,大学4年生の際に大学生活での学びや地域間移動の展望を尋ねる調査を行った。そのあと,調査対象者が教師として着任して1学期が終了した8月に,4年生の時の展望を振り返ってもらいながら,現在の環境適応の状況や教師としての過去展望・将来展望について尋ねる調査をおこなった。大学4年生から初任教員へという変化を取り扱ったものである。 この調査の結果,本調査の調査対象者は,学生時代の地域間移動の展望やそのための準備の不十分さが,移行先への適応を阻害している要因のひとつになっている考えられた。具体的には,「教授能力」や「学級経営能力」といった教師としてのスキルの獲得よりも,「新しい場に移動しそこで適応すること」という場所への適応を展望した準備が必要であることが示された。したがって,教員養成においては,地域間移動も含みこんだ移行期の支援が必要な学生の存在が示唆されるという結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,教員を志望する大学生を対象として,彼らが「地域」の重要性をその学びの中にどのように位置付けているのか(大学での学び),また,教師という立場で社会に出るにあたって,地域から地域に移動を行う際に,それが彼らの環境適応や時間的展望の形成にどのような影響を与えるのか(大学から社会への移行)を検討するものである。 これまでに,「地域」の重要性に関しては「地域と学校の協働の重要性」を測定する尺度を開発している。そしてそれを用いて,教員志望動機など教師としてのキャリア形成に関わる変数との関連を検討し,教員養成での学びにおいて「地域」を重視することの意味を明らかにした。 また,地域から地域への移動という点では,実際に移動した教師を対象とした縦断的な面接調査を行った。そして,移動にあたっては教師としての力量形成以外にも,移動してあらたな環境に適応することそのものへの準備が必要である可能性を示唆する結果を得ている。
このように本研究課題はおおむね順調に進展しているが,得られた研究成果をまだ学会や論文等で十分に報告できていない点が課題としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度は,これまで得た研究知見を教師教育学会などで発表したり,論文化するなどして研究知見を公にすることを主たる目的とする。また,日本教育工学会誌に掲載された「地域と学校教育の協働の重要性の認識尺度」を用いて,当該尺度が測定する意識を強く持つ教員志望の学生の特性についても研究を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,学会発表などの出張が全くできなくなってしまったため次年度使用額が生じた。2022年度も出張ができないことが予想されるため,調査を外部委託したり,最終年度ということで研究報告書を作成するなどといった使用計画を立てている。
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