点字をコミュニケーション手段としている視覚障害者が、読み書きの道具として使用する「点字ディスプレイ」は、非常に高価な装置である上に、サイズも大きく、かなりの重量である。最終年度は、タブレット端末で点字入力可能なソフトウェアを開発し、学会発表も10月に行えた。点字は6点から成り、左右の人差し指・中指・薬指を使い入力するものであるが、タブレット端末での入力となると、当然タブレット画面は見えず、凹凸も無いため6点の位置関係が分からない。また利用者ごとに指の間隔も異なるため、6点の位置関係を固定の位置と固定のサイズで指定すると、利用者にとって使い勝手が非常に悪くなる。この問題を解消するために、本ソフトウェアを使用する際には、利用者が好む位置関係で入力できるよう初期設定機能を付加した。いわゆるキャリブレーション機能で、使用開始時に個人の好みに合わせ設定できるように設計した。発表においては、動画による解説も含め、点字入力装置をタブレット端末で代替し、これまで使い勝手悪かった重量・サイズの問題が解消される上、無線で使用できるため配線の面倒もなくなったことを示せた。点字データは、点字コードのデファクト・スタンダードとなっている”North American Braille Computer Code (NABCC)”とし、データ転送は指定するIPアドレスへNABCCを送る設計とした。標準的な手の大きさを考慮すると8インチ程のタブレット端末の使い勝手が良いが、画面サイズの小さいスマホでも本ソフトウェアは利用可能である。開発した点字入力ソフトウェアは、Android系のタブレット端末向けに実装したが、今後はiOS系のタブレット端末の開発が今後の課題となる。
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