研究課題/領域番号 |
18K02817
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 京子 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (60283222)
|
研究分担者 |
香山 瑞恵 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (70233989)
山下 泰樹 長野県工科短期大学校, 電子技術科, 教授 (60777316)
原 道子 (山口道子) 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 教授 (70781938)
小畑 朱実 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 教授 (90781948)
谷 友博 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (00786981)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 音楽 / 歌声 / 声楽 / 指導法 / 身体知 / 形式知 |
研究実績の概要 |
ベルカント唱法に代表される声楽発声は、洋楽的唱法とも称されている。声楽発声による歌声の研究分野において、歌唱力と音響特徴量の関係については長年にわたって検討がなされている。ここでの音響特徴量とは、歌唱データを分析することにより出現する特徴量のことである。 本研究では、声楽初学者を対象とした歌唱指導と音響特徴量との関係に着目し、音楽大学の声楽専攻に所属する学生と、教員養成学部の音楽教育コースに所属する学生を対象に、3年間に渡り継続的なデータ収集と分析を行ってきた。その上で、声楽の習熟度に関連する音響特徴量による歌声評価指標を提案し、客観的な歌声評価方法を構築することを目指している。 提案する評価指標とは、特に声楽初学者の歌声評価に適してはいるが、多様な習熟度・多様な歌唱への専門性を有する被験者の歌声データを解析することで、提案指標と習熟度との関係を整理した。 ここでは以下の二つの研究課題を設定している。1. 歌声評価指標を用いて、声楽の習熟度を区別可能であるか。2.指導者の印象評価と提案指標との関係はどうなるのか。1.については、提案指標を用いて習熟度の異なる声楽初学者群とプロ歌手群を比較し、区別可能なことを統計的検定に基づき確認した。2.については、声楽初学者の歌声に対する指導者の印象評価と提案指標との相関を確認した。そして、提案指標を用いて歌声の良悪を区別する閾値を具体化した。さらに、こうして得られた成果について学会で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目に予定していた通り、初学者の継続的なデータ収集と分析を行うことができた。さらに、既に検討を進めてきた歌声の響きに関連する周波数特性の強度や割合の定量化を再検証し、歌声評価指標として提案することができた。指導者による指導前と指導後の歌声を比較し、さらに「指導語」と「歌声の印象評価語」との関連の検討を始めている。 これまでに、心理的印象に影響を与える音響特徴量が歌唱指導により変化することが確認されていることを踏まえ、この音響特徴量を評価するために声楽初学者を対象とした特定音に対する歌唱評価指標を検討し、提案することができた。提案した評価指標は、特に声楽初学者の歌声評価に適してはいるが、多様な習熟度・多様な歌唱への専門性を有する被験者の歌声データを解析することで、提案指標と習熟度との関係を整理した。 また提案指標を用いて、歌声の良悪を区別する閾値を具体化し、その成果について学会で発表を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究によって、声楽家に求められる歌声の特異な周波数成分の強さや大きさをパラメータとする音響特徴量を視覚化することによって、声楽の習熟度および習熟過程が説明できる可能性を示すことができた。今後は、歌声を評価する語の意味・意図の整理をさらに進め、歌声に対する指導のために用いられる語の意味・意図を整理し、更には歌声の変化(成長)を説明するパラメータとの対応の成果を適用させていく。 正しく歌声を聴く“聴覚的刺激としての歌声”に対して、その声を説明する言葉と物理量の変化とを対応付けることで、歌声の変化や善し悪しの判断する能力を効果的かつ効率的に獲得させるメソッドの具体化を謀る。それによって歌声評価・指導表現の間身体化の基礎としたい。 また本研究の成果に対して、これまでに解明されている音声生理学的見地からの身体変化との対応付けを図ることで、実証的整合性の検証も試みる予定である。
|