昨年度はこれまでの研究結果をもとにして教育的な有用性が見込まれるメソッドを構築し、その成果をもとに実際に教育内容のデザイン・実践及び検証を行うことを目的として研究を遂行した。まず、検証のために二種類の教育実践のデザインを行った。ひとつは映像制作のワークフローのうち特に有用性が見込まれるメタ認知を促す体験となることを主眼に置きフィードバック、相互評価を体験構造に意識的に織り込み、これらの目的を達成する組織を構成しグループワーク形式とした。もうひとつは自立性の高い学習となることを主眼に置いて、モチベーション向上の構造を意識したものとした。このデザインを用いた実践を通じた成果物からは学習者のメタ認知活用の跡が読み取れるとともに、アンケートからはモチベーションの高い状態が示されていたことから、メソッドをもとにデザインした映像制作を手段とする実践には体験として教育的有用性があることも示唆された。 本年度はこれまでの研究について総括するとともに、得られた知見の再検証と応用的可能性に関する模索を行った。 これまで、映像制作を通じた実践は複数人で組を構成した上で機材を用いて同じ空間で取り組む必要があった。しかし、本研究の中心的な実施時期がコロナ禍の最中であったことから、遠隔授業を通じて対面と同等の価値を持つ実践の手法に関する研究を加味し、加えてその教材の在り方についても検証を行うことができた。また、本研究で得られた知見を発展させVR空間を用いた教育実践の可能性も検討した。この検討内容について考察を含めた研究結果を学会などで発表を行った。さらに本研究の有用性を前提とした遠隔授業のオンデマンド用教材の要素や学習者の反応についても調査を進め、これに関する論文を執筆して投稿した。
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