研究課題/領域番号 |
18K02830
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
駒谷 真美 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (20413122)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メディア情報リテラシー / 生涯発達 / エリクソンの心理社会的発達理論 / OECDの社会情動的スキル / 乳幼児期から老年期まで / ワークショップ実践 / ルーブリック評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、3年間の継続研究として、乳児期から老年期まで生涯発達の観点からメディア情報リテラシー(MIL)理論を世界で初めて体系的に構築し、各発達段階でのワークショップ実践により、MIL理論の効果を検証することを目的としている。 2019年度は、MIL生涯発達理論の構築を推し進めた。前年度に、UNESCOのMILを元に本研究者の「MIL育成のフレームワーク」を踏まえ、エリクソンの心理社会的発達理論とコールバーグの道徳性発達理論を参照し、MIL生涯発達理論を試案した。2018年度末にJournal of Media Literacy Educationに投稿したが、理論の関連性が強靭でないと指摘を受け、先駆的な研究の継続を強く要望された。 そこで本年度は、新たにOECDが世界的に提唱している社会情動的スキルを取り入れた。19の社会情動的スキルが特性5因子モデルと関連しており、教育文脈からMIL生涯発達理論を強化した。UNESCOがSwedenで主催するGlobal Media and Information Literacy Week 2019 Feature ConferenceにおいてPlenary Session 2a, Media meet MIL to ensure lifelong learning and trustの部門で、 MIL生涯発達理論(Constructing a Developmental Theory of Lifelong Media and Information Literacy Based on Practical Research: Part I Theoretical Construction)を発表した。国際会議の参加者から多くの有意義なフィードバックを得られることができ、実践に向けて方向性が定まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、主たる目標である「MIL生涯発達理論の構築」は達成できたが、実践の準備まで至らなかったからである。これは「研究実績の概要」で述べたように、理論構築に検討を重ねた結果である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度前半はWS(ワークショップ)準備に入る。各発達段階の調査協力先(こども園・児童館・小中高大・渋谷区と足立区の自治会)にMIL生涯発達理論のWS実践について趣旨説明を行い、実践日程を調整する。 2020年度後半に各発達段階でWS実践を行う。WSの形態は「10人前後(少人数グループ) / 1セット(60~90分)×2回(同日か別日)=2チャレンジ / チャレンジ1(情報の受け手と使い手)+チャレンジ2 (情報の作り手と送り手) / 各発達段階に応じたメディア素材を教材として活用/参加者との対話から主体的な気づきを促進」するものである。各実践はプレポストデザインで、WSのビデオ録画と半構造化インタビューも行い、プロトコル分析やテクスト分析から質的変化を解明する。MIL生涯発達理論の実践評価を行い、理論を精緻化しMIL生涯発達理論(改訂)を最終構築する。 ただし2020年4月現在において、日本は新型コロナウィルスの感染拡大が止まらず、政府は国家的危機と判断し「緊急事態宣言」を発令した。一般的にWSは、感染リスクの高い「換気の悪い密閉空間・多くの人が密集する場所・近距離での密接した会話(3密)」が発生しやすく、クラスター発生が懸念される場所である。よって、来年度本研究のWS実践は「緊急事態宣言」後の状況を鑑みつつコロナウィルスが完全に収束した後、3密を徹底回避した安心安全な環境下で行うことが大前提となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にMIL生涯発達理論のWS(ワークショップ)実践を計画しているため、次年度使用が生じている。2019年度に本研究の2本柱の一つである理論構築を堅固し、2020年度は残り一つの柱である実践と効果検証を行う。WSでは、乳児期から老年期まで各発達段階の調査協力先(こども園・児童館・小中高大・渋谷区と足立区の自治会)が多岐に渡り、多数のWSのファシリテーターを使用するため、実践に必要な経費を鑑みて次年度使用となっている。
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