研究課題/領域番号 |
18K02841
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (10410763)
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研究分担者 |
影戸 誠 日本福祉大学, その他部局等, 客員教授 (50351086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全天球映像 / 国際協働学修 / Project Based Learning / Virtual Reality / 高等教育 |
研究実績の概要 |
前年度までの本研究の成果を論文にまとめ、投稿していたものが国際論文誌に採録された。論文では、全天球映像閲覧による没入感がもたらす空間的な認知により、映像体験者が緊張感や共感等、非言語的・感情的な面での刺激を、通常映像以上に強く感じていたという知見等をまとめている。本年度は最終年度の取り組みとして、より多くの学生に展開し、映像の効果についての知見を深めるとともに、学生自身による自律的・持続的な活用に向けた実験を進めていく予定であった。しかし、大学への学生の入構制限等により、学生を被験者とする実験を十分に実施することはできず、研究期間を延長することとした。前年度から取り組んでいた全天球映像のインタラクティブな閲覧を可能とするアプリケーションに関しては継続開発し完成させたが、Head Mounted Display(HMD)専用のものとなるため、学生に活用させるまでには至らなかった。 そこで、学生が遠隔からでも全天球の映像体験をできるよう、オンライン映像アーカイブを作成し、限定的ながら、学生に遠隔から閲覧してもらうという実験を行った。対象は大学1年生であり、本年度、海外フィールドワークへの参加を予定しながら、渡航することが叶わなかった者たちである。対象者には、スマートフォンを装着して活用するダンボール製の安価なHMDを配布し、組み立てと映像の閲覧を試みさせた。用いた映像は、前年度までに記録された海外での各種活動の様子である。 ネットワーク回線経由での閲覧となるため、条件により解像度が落ちること、また、自身のスマートフォンと段ボール型のHMDで構成される簡易閲覧装置としての性能の問題から、専用HMDでの閲覧と比較すると没入感は減少する。しかし、学生からは、渡航できなかった地に降り立った臨場感を指摘する声も聞かれた。こうした試行結果を踏まえ、本実験・評価を計画していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大学への学生の入構制限等により、学生を被験者として、大学内での説明・実施を前提としていた実験を十分に行うことができなかった。また、前年度より開発を進めていた、全天球映像をインタラクティブに閲覧するアプリケーションについて、完成させはしたものの、Head Mounted Display(HMD)専用のものとなるため、学生との実験の中で活用させるまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の計画が、キャンパスへの入構制限等により十分に実施できなかったことを踏まえ、研究期間を延長して対応する。大学への入構制限は緩和されているため、昨年度計画しながら実施できなかった内容の実施を想定するが、状況が変化した際にも、一定の成果を得ることができるよう、代替の実験の計画・推進も念頭に置く。具体的には、一部、取り組みはじめたオンラインの全天球アーカイブをさらに進め、学生自身のスマートフォンを装着して活用する簡易型HMDでの映像閲覧実験を行うこととする。 上記により、当初の最終年度に行うことを予定しながらも、十分な実施には至らなかった活動に取り組む。具体的には、実験を繰り返し、活用事例を増やしていくことで、全天球動画の本質に迫り、実践的・継続的な活用に向けた知見を獲得する。学生自身による自律的な活動を完全に実現することは、本研究の範囲を超えるが、その実現に向けて試行を行い、その中から課題を明らかにすることを目指す。 プロトタイプとして開発した全天球映像のインタラクティブな視聴アプリケーションについては、専用HMDでの視聴が前提となるため、リモートからの実験に対応することは、現時点では難しい。そこで、規模を縮小し、短時間、少人数でできる範囲のことを追求し、インタラクティブな全天球動画を閲覧することによる学修の可能性について考察することとする。 以上により、アプローチの方法は異なるものの、当初に目指した成果の達成に向けて取り組む。すなわち、拡張された全天球動画を活用した効果的な学修のモデルを提案するとともに、広く一般の学生が自律的に活用していくための課題を整理していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国内外の学会・研究会が中止、あるいは、オンラインでの開催となり、旅費の執行がなくなった。次年度についても、国内学会は限定的な開催となり、国外への渡航は難しいことが想定される。したがって、オンラインによる没入感伝達の実験遂行に必要となる物品、実験協力の謝金、投稿論文の校正費等に支出することを予定している。
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