前年度までに蓄積した全天球映像を動画共有サイト(YouTube)にアップロードし、オンライン映像アーカイブを作成した。自身のスマートフォンをセットすることで全天球映像を体験できる段ボール型(組み立て式)の簡易閲覧装置を被験者に配布し、映像体験実験を実施した。カンボジアへのフィールドワークを予定する学生らに、過去に記録した映像を体験させた。また、カンボジアの教員・学生、計10名が来日する機会があったため、これらの教員・学生にも、アクセス方法を提示の上、映像体験をしてもらった。 視聴に用いた映像は、コロナ禍以前にカンボジアに渡航した日本の学生とカンボジアの学生で、グループワークをしていたものである。海外への渡航が制限されていたこともあり、全天球の映像を体験した学生は、海外で活動していた先輩たちを羨ましく思うとともに、現地で活動することの思いを強くしたように思われた。カンボジアの教員・学生達も、馴染みある自分達の学校での活動の状況ながら、学生の様子を映像のような視点で間近に関することはなく、グループ活動の質の評価に有効ではないかとの意見が複数人から述べられた。 全天球映像活用は、臨場感があり、通常映像と異なる特質があり、活動の様子がよりよく分かるという声は聞かれ、従来とは異なる可能性があることが示唆された。通常映像で得られる効果との明確な差異を特定したわけではないながら、状況に応じて各種メディアを使い分けるように、全天球映像も選択肢の1つとして、必要に応じて簡易に活用できるとよいと思われる結果であった。今回の実証により、手順を整理しておくことで、学生・教員が映像を活用できることは確認できた。しかし、スマートフォンで閲覧する場合も、高性能な端末が必要であること、閲覧環境(アプリ)がまだ安定していないこと等、現場での活用のために課題となりうるいくつかの点も明らかになった。
|