研究課題/領域番号 |
18K02849
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
袰岩 晶 国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, 総括研究官 (00626210)
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研究分担者 |
篠原 真子 国立教育政策研究所, 研究企画開発部, 総括研究官 (30342611)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報活用能力調査 / 大規模教育調査 / 教育調査法 |
研究実績の概要 |
本研究が対象としている「情報活用能力調査」について、文部科学省が第二回目の小学校・中学校・高等学校調査の実施を検討し、調査問題の作成を始めたこと、また、第一回目の調査で用いていた「3観点8要素」という下位分野が学習指導要領の変更に伴って「3分類10領域」となったことを受け、当初予定していた実際のデータの再分析の前に、第二回目の調査で用いる「項目反応モデルと母集団モデルとを統合したモデル」と「等化方法」の検討を行うことにした。 コンピュータシミュレーションで検証した結果、以下の2点のことがわかった。 (1)母集団モデルと統合する項目反応モデルとしては「2パラメータ・ロジスティックモデル」が有効であること:シミュレーションデータが「ラッシュモデル」や「3パラメータ・ロジスティックモデル」に従う場合でも、「母数(特に分散)」の推定には「母集団モデルを統合した2パラメータ・ロジスティックモデル」が安定して良好な結果を示した。また同時に、「Multiple Group Model」を統合した場合でも同じような良好な結果を得ることができた。 (2)項目反応モデルを使用した場合の等化方法として「Stocking/Lord法」が有効であること:シミュレーションの結果から、「Stocking/Lord法」は「mean/mean法」よりも誤差が少ないこと(「Concurrent Calibration」はさらに誤差が少ない)、母集団の分散が異なる場合の等化では「Concurrent Calibration」にはバイアスが生じるが、「Stocking/Lord法」にはそのような問題が生じないことがわかった。なお、「Concurrent Calibration」に際し、「Multiple Group Model」を使うことで、上記の問題に対応できることもあわせてわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた「情報活用能力調査(高等学校)」の解答データの再分析よりも先に、平成32年度に行う予定であった「等化」に関する研究と、平成33年度に行う予定であった「母集団モデルにおける補助変数の利用法」に関する研究とを先に行い、これらを同時に検討することで、等化法としての「Concurrent Calibration」の限界とそれへの対処方法(「Multiple Group Model」の使用)を知ることができた。また、「情報活用能力調査」のような大規模教育調査において、項目反応モデルとして「2パラメータ・ロジスティックモデル」が有効であることもわかり、本研究の研究計画に照らして見て、平成30年度の1年間で1.5年分+αの進展が見られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究成果を踏まえ、「情報活用能力調査(高等学校)」の解答データの再分析を進める。「2パラメータ・ロジスティックモデル」が有効であることがわかっているため、これを使って情報活用能力の下位尺度の得点化を行う。特に多次元項目反応モデルを使った場合と、別々に項目反応モデルを用いた場合との違いを明らかにする。 また、調査問題作成時の分類だけでなく、モデルの適合度を加味した問題の分類も行い、下位尺度を作る方法についても検討する。 これらの研究成果は、今後行われる文部科学省の「情報活用能力調査(2回目)」で実際に使用できる分析モデルとなるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度にワークステーションの購入を予定していたが、年度初めに「情報活用能力」と同様のコンピュータ使用型調査であり、学力調査の国際的なネットワークである「FLIP」の第1回国際会議がパリで行われることを知り、急遽それに参加するための旅費に購入費用の一部を充てることにした。 ワークステーションの購入については、同時に購入する予定であったソフトウェアを無料のもので代替するとともに、消耗品、人件費・謝金を見直すことで費用を確保し、平成31年度に行う予定である。
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