研究課題/領域番号 |
18K02852
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
石沢 千佳子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (00282161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 集中状態 / PC操作ログ / 体動 / 脈拍 / 心拍 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,PC操作ログを用いて作業者の集中度を推定する手法の探求である。2018年度は,集中・非集中の各状態に応じて記録パターンの変化するPC操作ログの選出,および集中・非集中の各状態を定量的に判別するために生体情報の計測を行った。 具体的には,ワープロソフトを用いて文章入力作業を行っている間のPC操作ログの記録と生体情報の計測を同時に行い,作業中の様子をビデオカメラで撮影した。記録したPC操作ログはアプリケーションソフトのウィンドウに関するログ,キーボード操作に関するログ,およびマウス操作に関するログであり,計測した生体情報は体動,脈拍,および心拍である。作業時間は30分間であり,20代の被験者23名が紙媒体に書かれた文章を見ながら入力作業を行った。入力作業終了直後,被験者と共に成果物と動画を確認しながら,入力作業中の心理状態についてヒアリングを行い,被験者が集中していると感じていた時間帯を決定し,この時間帯を集中時と定義した。 取得ログを経時的に整理し,作業時間全体における操作回数,一定時間毎の操作回数の頻度,並びに分散を求めて検討した結果,集中時には,キーボードのキー押下数の分散値が作業時間全体における分散値よりも高くなる傾向を認めた。この結果は,取得可能なPC操作ログのうち,キーの押下リズムの変化に着目して集中・非集中の状態を判別できる可能性のあることを示唆している。 計測された体動を経時的に調査した結果,入力作業中の被験者の体は主に前後左右に動き,集中時にはその動きが小さくなる傾向を認めた。また,計測された脈拍と心拍の値をローレンツプロット解析した結果,集中時には交換神経の活動が優位になり,非集中時には副交感神経の活動が優位になる傾向を認めた。これらの結果は,被験者が集中していたと感じていた時間帯が生理学的見地からも妥当であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は計画通りに, ①集中度の推定に用いるログの選定,②集中・非集中の各状態におけるログおよび生体情報の計測を行った。その結果,集中度の推定に用いるログとしてキーボード操作ログを選出した。また,キー押下回数の分散が集中時に高い傾向を示すこと,体動は集中時に小さくなること,脈拍・心拍の値は集中時に交感神経が優位になる傾向を示すことが明らかになった。このため,計画全体として順調に進展している。 なお,当初の計画では,PC作業を長時間行って疲労したときに変化の認められる種類のログを選出する予定であったが,効率良く実験を進めるために,被験者が集中していたと感じていた時間帯と,それ以外の時間帯で違いの認められるログを選出する方法に変更して実験を行った。加えて,当初の計画では,集中しやすい音楽を流すことによって集中状態を作り,作業中の被験者に話しかけることによって非集中の状態を作る予定であったが,集中しやすい状況や注意力が散漫になる状況が被験者によって異なることから,無音の状況下で作業を行った後,被験者が集中していたと感じていた時間帯をヒアリングにより把握する方法に変更して実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,取得されたキーボー操作ログや体動・脈拍・心拍の各データから集中している時間帯を検出する方法を探求する。具体的には,キー押下回数の分散が集中時にどの程度高くなるのかを調査し,集中している時間帯を検出するための指標になり得る特徴量について検討を加える。さらに,集中・非集中の程度を推定し,作業者を支援(アシスト)する方法について検討する。
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