研究課題/領域番号 |
18K02857
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
安田 仲宏 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (30392244)
|
研究分担者 |
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90568883)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 空間線量率 / 放射性物質フォールアウト / 中国核実験 / 放射線ビックデータ / 原子力防災 |
研究実績の概要 |
環境放射能水準調査における環境放射線データベースなど約60年にわたる環境放射能のデータや、東電福島第一原発事故後の放射線データを時空間ビッグデータと捉え、新たな活用方法を提案することを目的として研究を推進した。本研究では、放射線時空間ビックデータ基盤を構築することと、その活用法についても検討するため、あらかじめ解決すべきテーマとそれを説明する仮説を設定し、これを実現しうる小規模なデータセットを用意、データベース化の後に気象データや地理データなどの活用可能なデータ基盤とのクロス統計等を行って仮説を検証する手法を採用した。 当初計画により以下の3つのテーマを設定した。①空間線量率及びラドン濃度の日変化の全国網羅的な検証。②過去の大気中核実験や原子力事故後の放射性物質フォールアウトの全国分布。③黄砂やPM2.5と空間線量率の増減の関連性。今年度は、福井県原子力環境監視センターのデータベースや環境放射能水準調査等の公開情報からパイロット的に解析ができる最少分量のデータセットによるデータ基盤を構築し、仮説の検証を行った。 テーマ①について、従来から指摘されていた接地逆転層という気象現象と空間線量率の日周期が関連することを日本全国のデータを用いることで証明、成果を国内2学会と国内開催の国際ワークショップにて報告した(昨年度)。 テーマ②について、中国の核実験にスポットをあて、その影響が確認されていたかどうかを放射性物質フォールアウトと空間線量率の2つの指標について検討した。従来、中国核実験起因の放射性物質フォールアウトの観測は報告されていたが、多変量解析を日本全国に反映することで、空間線量率においても中国核実験の影響が1週間以内に観測されていた事実を突き止めた。今後、現在の原子力防災体制に照らし、将来に備える方策の検討を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の通り、サンプリングデータを抽出し全国レベルの網羅的解析から、空間線量率と気象条件の相関につて従来説を支持する結果を得た。中国の核実験の影響を放射性物質フォールアウトのみならず、空間線量率でも検知できる可能性を拓いたことで、将来の原子力事故への備え(退避行動戦略)として過去のデータ活用が可能であることを提示できた。国際学会での報告も計画通りに行うことができた。 他方、論文化に向けては、当初計画よりも少々遅れていることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに過去のデータ活用により、原子力災害時の退避行動に結びつける方策の糸口を見つけることができた。現在の国内の原子力防災体制は、国内で起こるかもしれない事故のみを想定している。今後、大陸で災害が起こった場合の想定を現在の体制に照らし、地域ごとに発災の検知から退避行動につなげる方策の検討を行う。 成果の一部は、小学生用の授業資料として完成し、いくつかの小学校の防災教育で試行を進めた。今後、オンライン教材に対応、また学校の先生が加工可能な素材データとしての提供を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ基盤構築(システム設計)に関しては、テーマごとに必要な情報が変わるため、都度、変更する必要があることが分かり、最終年度に全体をまとめることとした。これに伴う購入物品を後ろ倒しした。
|