日本では、1950年代から放射線モニタリングポストを日本各地に設置し、「環境放射線データベース」に蓄積してきている。ホームページなどで一般公開されているものの、それらのデータは効果的に活用されていない。これらを「ビックデータ」として捉え、網羅的解析を行うことで有効活用方法を検討することを目的とした。 空間線量率は1日の中で増減を繰り返す現象(日変化)が観測されることがよく知られており、その成因は放射冷却によって地表付近で起こる接地逆転層であると考えられてきた。フーリエ解析による周期の特定とその強度(頻度)分布と気象条件(雨、風など)のクロス解析を行った結果、降雨よりも風との相関が強く、瀬戸内近傍や長野、岐阜など内陸において空間線量率が多くみられることを突き止めた。 中国による大気中の核実験と日本で測定される空間線量率の相関を調べた。これまで、核実験影響を調べるためには、放射性降下物を一定期間蓄積して測定されてきた。この方法では、緊急事態を把握する指標として用いることが困難なため、空間線量率の増減を全国網羅的に観測、時系列データの移動平均法導入することで中国からの放射性降下物飛来に関して警報を発するシステムにつなげられる可能性を示した。 また、放射線の量と自然現象の関係をより分かりやすく表示するために、空間線量率が日々刻々と変化する様子を風雨、雷などとともに表示するシステム(データベースと動画)を構築した。以上のように、「放射線ビックデータ」を用いた研究や教材としての可能性を示すことができた。
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