研究課題/領域番号 |
18K02859
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
益子 典文 岐阜大学, 教育学部, 教授 (10219321)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 教師教育 / 若手教師 / 経験学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,若手教師の経験学習能力形成モデルを構築し,そのモデルに基づく経験学習促進プログラムを開発することである。 研究初年度である平成30年度は,ベテラン教師(中学校17年間,教育行政職で10年間の経験)を対象にしたライフヒストリー調査として,初任から5年目程度の期間に,教職経験に有用であった問題解決事例のインタビュー調査と分析を行った。調査からは10個の問題解決事例が収集された。これらの事例すべてをKolbの経験学習モデルにより解釈したところ,(1)個々の事例に関する発話は少なくとも経験学習2サイクルを経た内容であり,抽象的概念化は2サイクル目に抽出されていること,(2)教職3年以下の問題解決事例は自己の変容によって解決するものが多いことなど,複数の特徴が抽出された。これらの特徴に関する再調査を行ったところ若手教師は抽象的概念化を行う能力は備えているが,内省的観察を反復することで円滑にその能力を発揮できるようになること,抽象的概念化の結果が蓄積されることにより,演繹的に問題場面と結びつけることができるようになることが示され,若手教師の経験学習モデルを構築した。 同時に,教育員会事務局の協力を得て,初任者研修受講者を対象として,経験学習に関する調査用紙を用いた調査を実施した。この調査では,1年間の教職経験を振り返り,学期毎に「開いている-閉じている」状態の回答を求めるとともに,前の状態と変化した理由を自由記述で回答を求めている。このデータについては,現在分析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の計画は,ベテラン教師の調査および仮説的な経験学習モデルの構築,教職初任者の学習経験の調査開始であった。この計画に沿っておおむね順調に進展している。 ベテラン教師の経験学習モデル構築については,とりまとめがやや遅れたため,予定していた学会発表ではなく紀要論文として発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究2年目の令和元年においては,教職初任者の学習経験調査分析の結果を分析し,研究初年度に構築した仮説的な経験学習モデルとの比較検討を行い,理想的な成長の要件を抽出することが重要である。現在,教職初任者のデータ分析を行っており,今年度中にはこの成果を発表する予定である。 またこの成果を踏まえ,経験学習能力モデルの構築に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ベテラン教師・初任者教師のデータ分析結果について複数回の学会発表を予定していたところ,ベテラン教師のとりまとめ完了,初任者教師のデータ集取完了時期が,それぞれ平成31年2月中旬であり,年度内に予定していた学会発表を実施することができなかった。これらの研究成果の学会発表は,研究協力者とともに,研究2年目である令和元年度に実施する予定である。また同時にデータ分析をより効果的に進めるための備品を購入する予定である。
|