研究課題
本研究の目的は,学生の学習行動の履歴である学習ログの分析結果に基づき効果的なフィードバック方法を開発し,その学習に対する効果を行動データと脳活動測定とによって検証することにある。この目的を達成するために,本年度は以下を実施した。1.学習に対するフィードバックや介入を効果的にするには,目標となる具体的な「優れたパフォーマンス(good performance)」と自身の現在の状態との差を明確に示す必要がある。そのため,まず,本研究では,「優れたパフォーマンス」である高成績者の効果的な学習方法を明らかにすることとした。具体的には,e-bookの閲覧ログを中心とする学習ログの分析によって,授業外での予習・復習における高成績者のe-bookおよびそのページを参照するタイミングや頻度を分析したうえで,どのようにページ間やe-book間の概念をつなぎ,理解を深めていくのかを検討した。本成果は,国際誌に投稿予定である。2.現在の大学における情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)教育において,重要な地位を占めるMOOC(Massive Open Online Course)講座を受講した際の学習を想定し,その基礎となる「動画を観察しながら理解する状態」と「理解内容を伝える状態」の行動データおよび脳活動データを測定する実験を実施した。具体的には,大学生30名を実験参加者として,「動画の観察」と「動画観察で理解した内容を伝達すること」を求め,その際の脳活動データをNIRS(近赤外分光法: Near-Infrared Spectroscopy)を利用して計測した。本成果は,国際会議および国際誌に投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究において,当初計画していた「学習ログを利用した高成績者の学習パターンの分析」と「学習時における基礎的な行動データと脳活動データの取得」を実施したため,おおむね順調に進展しているといえる。
今後は,今年度の成果である「学習ログを利用した高成績者の学習パターン」から,具体的にどのような学習フィードバックが可能であるかを検討する段階に移行する。また,これと並行して,今年度の実験結果に基づき,より実際の授業・学習時に近い行動データと脳活動データを取得し,効果的な学習と授業改善に向けた足掛かりとする。
当予算以外の予算により予定していた学会参加が可能であった。また,当初予定していたNIRS装置とは異なる装置のレンタルによる実験実施が可能であり,予定していた予算をしようしなかった。これらの理由により,次年度使用額が生じた。次年度使用額を利用することで,すでに得た実験データの当初の予定よりも詳細な分析と,更なる追加実験が可能となったため,これらを実施する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
International Journal of Human-Computer Interaction
巻: 35 ページ: 313-322
doi.org/10.1080/10447318.2018.1543077