研究課題/領域番号 |
18K02870
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大西 建輔 東海大学, 理学部, 准教授 (00303024)
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研究分担者 |
北林 照幸 東海大学, 理学部, 教授 (40408000)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヴァーチャルリアリティ / 数学教育 / 理科教育 / 曲面の描画 / 放物投射 |
研究実績の概要 |
本年度は, 2件の研究発表をおこなった. (1) 放物線を体感できるVRアプリの試作とその教材としての評価, FIT2019, N-011, 第4分冊, pp.289-290. (2) VR空間での音声認識を利用した2変数関数描画システムVVPlotの開発とその評価, インタラクション 2019, pp.867-870. 前者は, Android上で動作をするVRアプリで, 放物運動を体感することができる. その操作は, 電源ボタンをトリガーとして, 視線で投射角を決め, 速度を決めると, ボールが投射される. その際, ボールの移動と自身の視点と一致しているため, 自身が飛んでいる感覚が得られる. このアプリの教材としての評価実験をアンケートを用いておこなった. その結果, 小さな角度の場合や速度が小さい場合には誤差あること, 多くの人が本アプリを楽しめたという評価が得られた. 後者は, HTC Vive上で動作するVRアプリである. こちらは, 発言した数式を認識し, VR空間上に描画するプログラムとなっている. このプログラムでは, 認識部分をIBM社のWatsonでおこない, 数式としている. その数式の評価をおこない, 3次元空間の点集合を作成している. その点集合から, VR空間での曲面近似を作り, 表示している. また, コントローラを用い, 曲面に近づいたり, 様々な視点から曲面を見ることができる. このプログラムの評価をユーザによるアンケートに基づき評価した. アプリケーションとして, 概ね良い評価を得られた. また, 自由記述として, "数学は苦手だが, 楽しかった"という回答があった. そのため, 本アプリの目指している結果が得られていると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 2種類のプログラムを作成し, これらの評価をおこなった. これらは, 平成31年度に予定していたグラフ描画と力学的運動のプログラムである. 進捗としては, 予定よりも進んでいるが, 完全に実現ができたわけではない. 次の点がまだ実施できていない. 前者は, HTC Vive上で動作をしているため, 中等教育の現場では簡単に利用することができない. また, 音声認識としては, IBM社のものを利用しているため, ネットワークに接続している必要がある. そのため, ネットワーク環境がない環境では使うことができない. Unityで開発をおこなっているため, Android向け, iPhone向けのアプリとして出力できる. 今後, 携帯端末向けの開発をおこなう予定である. 後者では, 放物運動を扱い, Androidアプリとして開発をおこなった. アプリとして動作させた際に見られる実際との誤差や教材としての評価をアンケートを用いておこなった. このアプリは, ネットワークを使うこともなく, Android端末であれば利用できる形になっている. そのため, 現状の中等教育での利用が可能である. 本来の計画では, このアプリを用い, 入力方法の検討をおこなう予定であった. しかし, 入力方法として, 実装が終了したのは, 視線を用いる方法だけであった. そのため, 入力方法の検討がおこなえていない. また, あまり進捗のない点として, 付属高校の教員に対する調査がある. これは, 実際に動作するアプリを用いて, 対面で説明をおこない, 議論をおこなうことを予定していた. しかし, アプリ開発が遅れたことにより, 議論をおこなうことができなかった. 早急に計画を建てたい. また, 議論の相手として, 付属高校の教員だけでなく, 一般高校の教員とも連絡を取っていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
まず, 昨年度実施できなった次の点について推進する. 1. VRアプリので入力方式の検討. 2. 中等教育の現場の教職員との議論. 1については, 機器としてDayDream対応端末が2台, Cardboardの端末として3-4台を現状で用意できている. この機器を使い, 両方の機器を試してもらい, その使用感の差などを評価する実験をおこなう. 本実験は, 中等教育の現場, 特に高等学校でおこなうことを考えており, その準備を進める. 2については, 先の実験をおこなう高等学校の教員の方と議論をおこなう予定である. その他, 付属高校の教員との議論をおこない, 今後開発する教材を決めていきたい. 次に, 曲面描画のプログラムを Android端末/iOS向けアプリとすることを考えている. そのためには, HTC Vive向けに作られたUIをどうするかを考察する必要がある. 現状では, 音声による入力を用いる予定である. しかし, これまでの利用で, ノイズの多い環境では認識がうまく行かないという事例が見られている. そのため, 音声入力以外の入力方法も実装することを考えている. これまでは, Android端末向けアプリを中心に開発をおこなってきたが, 学生の多くは iPhoneを持っている. そのため, 自身で利用したいという学生にも, アプリを公開することができなかった. そこで, 本年度の備品費で MacとiPhoneを購入し, iPhone向けの開発を始める. これまでUnityベースで開発をおこなっているため, ある程度のソースの互換性はあると考えている. ただし, UI部分に関しては, Android向け, iOS向けと個別に開発する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初, 旅費として支出予定であったが, 機会がなく利用することができなかった. 今後, 高等学校教員との議論の際に旅費として用いる予定である.
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