研究課題/領域番号 |
18K02870
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大西 建輔 東海大学, 理学部, 准教授 (00303024)
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研究分担者 |
北林 照幸 東海大学, 理学部, 教授 (40408000)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヴァーチャルリアリティ / 教育 / 数学 / 物理学 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果としては, 次の2点がある. (1) VR斜方投射アプリを用いた研究成果が IEEEの国際会議にて採択. (2) VVRPlot for smartphoneの公開とその評価実験の公表. (1)は, 斜方投射をVR空間で体験するアプリである. 単に対象が投げられるだけでなく, 自身も対象と一緒に飛行することになる. 投射時には, 投射速度と角度を選択できる. 投射終了後に, 投射の軌跡を見ることや到達距離, 最高高度なども見ることができる. 2019年度に高校生を対象とした評価実験をおこなった. このVR投射アプリの教育実践に関する研究内容をまとめ, 国際会議 IEEE ICT & KE 2020に投稿した. 論文は採択され, 2020年11月に発表をおこなった. (2)は, 音声入力を用いた 2変数関数描画アプリ VVRPlot for smartphone の作成と発表をおこなったことである. このアプリは, 数学に苦手意識を持つ学生を対象とし, 2変数関数がどのようなものかを, 簡単に自身で見られるAndroid携帯向けアプリである. アプリでは, 視線による入力と音声による入力を用いる. 視線による入力では, 選択式で選べる項目(音声入力の開始, 描画, 移動など)が選択できる. 数式の入力は, 視線入力だけでは難しいため, 音声を用いて入力する. この際, 音声認識が返す文字列を, 加工することで, 数式に変換し, 描画をおこなっている. このアプリは, 2021年5月現在, Google Playからダウンロード可能である. また, 本アプリに対する予備実験をおこなった. その結果, 移動が難しい, 音声入力のタイミングがわかりにくいなどの指摘があった. これらの問題点を改良したバージョンを作成し, 再公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度中に, VVRPlot for smartphone のアプリとしての評価実験をおこなった. この実験では, 移動の難しさ, 音声入力のタイミングがわからないなどの指摘があった. 移動を簡単におこなうために, 画面の隅にあった移動ボタンを, 画面の中央下部に移した. 同様に, 画面隅にあった大きさを変更するボタンについても画面中央下部に移した. 音声入力のタイミングは, 文字列での表示がされていたのだが, 気づかない人もいた. そこで, 音声入力が可能となったときにボタンの色を変更するようにした. 以上の改良を加えたアプリを現在 Google Playで公開中である. 2020年度から新規のアプリを作成している. このアプリは, 空気を可視化するARアプリある. これまで作成してきたVRアプリは, 立体視に慣れていない小学生以下の生徒では活用が難しい. そこで, 新たな試みとして, AR理科教材を作成することにした. このARアプリでは, 空間中に一定個数の分子(球体で表現)を生成する. この個数を実際の空気の組成と同様にする. すなわち, 窒素分子が78.1%, 酸素分子が20.9%, アルゴン分子が 0.9%となる. その上で, 二酸化炭素分子を少なくとも 1個は生成する. これらの分子は色により区別が付くようになっている. また, それぞれの分子の説明も表示できる. さらに, 温度変化による速度の変化を見ることができる. 本アプリもGoogle Playにて, 公開中である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年3月現在, VVRPlot for smartphoneは, 改良版が公開中である. しかし, 改良版のアプリとしての評価やユーザである大学生が 2変数関数について興味を持ってもらえるか, 苦手意識が減るかというのはわかっていない. そこで, 微積分を学ぶ大学生(主として大学 1年生)に利用してもらい, 評価実験をおこなう予定である. ただし, コロナウィルスの影響で, 対面での実施が難しい状況である. 一部の科目で実施される対面講義の後に, 説明をおこない体験をしてもらいたいと考えている. なるべく多くのユーザでの評価実験をおこない, 国際会議等での発表をおこなう予定である. AR空気可視化アプリに関しても, アプリの評価実験をおこなった. VVRPlot for smartphone と比較すると, ユーザの評価はよかった. これは, VRアプリとARアプリの違いであると考える. VRアプリは, 視線や音声入力など普段は利用しない操作が必要となる一方, ARアプリでは, 画面上のボタンを簡単に押すことができる. また, VRのような没入感はないが, 動作なども見やすい. しかし, このアプリの対応機種が非常に少なく, ほとんどの機種で利用できない. 現在再作成をおこなっており, 多くの機種に対応できた後に, 評価実験をおこなう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の科研費は, 主に国際会議に参加し, 発表をおこなうための予算として, 利用する予定であった. 目標としていた国際会議には参加/発表したが, コロナウィルスの影響で, オンラインでの開催であり, 渡航費が不要となった. 予定していた出張もほとんど行くことができなかった. そのため, 出張費が大幅に減少した. また, 2020年当初からのコロナウィルスの影響により, 対面の講義がほぼなくなった. これまでは, 講義終了後に簡単な説明をおこない, 講義外で体験と評価をおこなっていた. しかし, 対面講義が少ないため, このような方法で評価実験をおこなうことが難しい. そのため, 評価実験が遅れている. 2021年度は, 大学1年生の講義を担当する予定であり, 対面での講義も予定されている. この講義の中で, 説明をおこない, 評価実験に参加してもらう予定である. 既に完成している VVRPlot for smartphone については, 評価実験をおこなった上で, 2021年11月に開催される国際会議での発表を目指す. この論文の校正費用, 国際会議への参加費や現地への渡航費に科研費を利用する予定である.
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