研究課題/領域番号 |
18K02875
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
森田 健宏 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 教授 (30309017)
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研究分担者 |
浦嶋 敏之 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 教授 (30806534)
松河 秀哉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (50379111)
堀田 博史 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (60300349)
佐藤 朝美 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 准教授 (70568724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保育者の業務支援 / 園務情報化 / タブレット端末の活用 / 公立学校園の課題 / 閉域ネットワーク / 地方公共団体の部署間連携 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年末に発表した園務情報システムの既利用園、非積極的利用園、非利用園へのヒアリング調査の結果をもとに、以下のさらなる追加調査を遂行した。 まず、第一に、前述のうち、非積極的利用園を対象にその後の追跡調査を行った。既利用園、非利用園については、それぞれに支援や相談のあり方や園の運営方針が多様であり、本研究の趣旨である有用性の実感、充実化について一義的な適用検討が望ましくないためである。追跡調査の結果、(1)ユーザスキルに応じて、いわゆる「慣れ」による習熟度向上が確かに見受けられること、(2)職員間のコミュニケーションの方向性が、いわゆる「上意下達型」だけでなく、タブレットの使用法のアドバイスなどで逆方向のコミュニケーションが生まれ、さらに園職員全体のコミュニケーションの活性化につながったこと、(3)当初はベテラン層を中心に業務負担増のイメージが持たれやすく、導入が難航していたが、保護者懇談会などの機会で、タブレットにより文字だけでなく画像や動画を示すことによって好評であったことを契機に利用度が高まったこと、(4)各担任が子ども理解にあたって、「学びの物語」を綴ることへのハードルが下がったように見受けられることなど、習熟が進み、プラスの効果が生じた事例を確認できた。 第二に、私立園と公立園との園務情報システム等の導入格差が伺えていたこと、さらには地方公共団体における情報の共有化が課題になっていると想定されることから、日本国内の6市の教育関連部局にヒアリングもしくは文書による調査を行った。その結果、一部共有利用はあるものの多くは困難であり、(1)情報管理における閉域ネットワーク構築の課題や、公益性、公平性の観点から導入が進みにくい領域があること、(2)乳幼児期の子どもを支援する教育、保育、福祉、母子保健等の部署間連携の課題が特に困難であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究成果として、前述の通り、(1)昨年の幼稚園等へのヒアリング調査の追跡調査を実施し、問題点の整理を行った上で、本研究の主題である「園務情報システムの有用性と実質化」を解決志向で導くための課題をモデル化することと、(2)公立園において園務情報システムの普及が進んでいないことや乳幼児期の子どもを支援する教育、保育、福祉、母子保健等の部署間情報連携が困難であることについて行政にヒアリング調査を行っている。 このうち、(1)は次年度の関連学会にて発表予定であること、(2)については、「教職研究・実践集録(関西外国語大学教職教育センター)」に採録され、Researchmapにも公開している。その点で主な内容については、遂行できていると考えている。 一方で、上記(1)にあるように、園務情報システムの有用性と実質化を解決志向で導くための課題をモデル化するにあたり、かなりの時間を要した。これには、いくつかの原因があるが、園務情報システムのソフトウェア開発自体がメーカー側で相当に進んでおり、この開発進度や内容に対する課題として、個人のキャリアと習熟度の差異、ユーザビリティと各園の情報ニーズの実情と支援のあり方、すなわちユーザ側である保育者(経営者)の支援ニーズを洗い出すことが、現状の変化に応じた研究成果の社会還元となると考えるためである。その一部の調査の着手を令和二年2月~3月に想定していたが、新型コロナウィルス感染症等の様々な憂慮から協力園への依頼自体が難しくなったため、進展状況に対し、厳しい自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、新型コロナウイルス感染症による敬遠傾向が払拭され、研究協力関係が速やかに構築できるよう環境が改善されることを願っているが、現状については、既存の近似研究の様々なデータを参考にシミュレーションを進めながら、調査研究の準備を進めていく。とりわけ、本研究のターゲットとしているのが、(1)利用を困難とする保育者のマイナーな原因の究明、(2)既導入園における保護者側の利便性の調査、(3)保育者や保護者等によって入力、集積されたデータの「園としての活用のあり方(園運営の分析や点検・評価、保育の質的向上の検討法など)」のガイドの作成を考えている。 なお、昨年の報告書以来、研究の社会還元ニーズを企図して研究計画を一部変更している点に関して繰り返し述べていることであるが、単なるソフトウェア開発であれば営利企業が競争すればよいことである。本研究の視座は、先鋭的・画期的な園務情報システムの開発や利用よりも、いわゆる情報利用を困難とする園や保育者をいかに後方支援し、有用性の実感につなげていくことにある。それが公平な保育者の業務負担軽減や質的向上につながっていくことである。そのための支援モデルをを見直して再構築し、それに資する成果物の開発とデジタルアレルギー等の保育者に試用してもらって成果とすることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果物作成等を後の年度に回し、調査モデルを構築するにあたり、各種ヒアリング調査を行うにあたって、出張旅費による支出を優先的に計画していたが、地方行政組織へ実際にヒアリングを行うにあたり、文書での質問及び回答を望まれるケースがいくつかあった。また、園へのヒアリング調査については、個人情報保護の観点からタブレット端末のモデル利用の説明にあたり、当方の端末を持参する必要性があったことから購入をしているが、当方の成果物作成によるシミュレーション研究ついては、前述の通り、後の年度に優先順位を変更している。そのため、成果物を担当する共同研究者への予算配分の執行、物品費の使用については次年度以降としている。
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