研究課題/領域番号 |
18K02887
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
松田 豊稔 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系TEグループ, 教授 (00157322)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共起ネットワーク / 学習項目 / 授業改善 / KH-coder / 共分散構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、理工系専門科目における授業改善を目的として、授業内容の項目関連構造分析に基づく授業設計と学習支援を提案するものである。項目関連構造分析は、授業内容を多数の構成要素(学習項目)に細分化して、学習項目間の関連性と順序性を定量的に定め、授業科目を構成する学習項目の階層構造関連図として示すことである。本研究の初年度(2018年度)と2年度(2019年度)は、テキストマイニング用のフリーソフト「KH Coder」を用いて、熊本高専情報通信エレクトロニクス工学科5年の授業科目『電磁波工学』(2単位必修科目)用の教科書「電波工学 コロナ社」(以下「電波工学」)の項目関連構造分析を行った。そして、「KH Coder」により、学習項目の抽出、学習項目間の関連を視覚的に表示する共起ネットワークが求められることを示した。ただし、(1) 学習項目のデータベースとなる辞書の作成と(2) 学習項目の関連性とともに順序性を示す共分散構造解析の2項目が研究課題として残っていた。 2020年度は、「電波工学」の分野の学習項目の辞書作成を目的として、無線従事者国家試験問題(平成19年から令和2年までに実施された全36回の第1級陸上無線技術士無線工学B)から学習項目を抽出し、それを専門基礎と専門応用に分類し、それぞれの辞書を作成した。また、この辞書をもとに「電波工学」の各章の内容に対する共起ネットワークを作成し、授業に導入した。そして、共起ネットワークによる学習項目の関連性の理解に関するアンケートを実施し、現在、そのアンケート結果の分析を行い、辞書及び共起ネットワークの改善を行っている。次に、「電波工学」の分野の辞書作成により学習項目が整理できその系統性も把握できるようになり、今後は共分散構造解析による学習項目の順序性を表示するためのデータ作成及び分析結果の評価が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度(2020年度)は、研究課題として (1) 学習項目のデータベースとなる辞書の作成と (2) 学習項目の関連性とともに順序性を示す共分散構造解析の2項目を実施した。課題(1)の辞書作成は、無線従事者国家試験問題(平成19年から令和2年までの全36回の第1級陸上無線技術士無線工学B)から学習項目を抽出したが、複数の専門用語からなる複合語及び同じ意味を持つ専門用語の取扱いにおいて、KH-coderによる抽出結果に加えて手作業で分類することになり時間を要した。なお、同じ意味を持つ専門用語の取扱いについては、KH-coderの「コーディング」機能が利用できることが分かったが、その活用にはいくつかの課題がある。 以上のように、「電波工学」の分野の学習項目を整理分類しデータベースを作成し、共起ネットワークは求めることができるが、KH-Coderの他の分析機能(対応分析等)による解析及び課題(2)の共分散構造解析が十分に実施できていない。また、「電波工学」の項目関連構造分析の授業で実践し、2020年度に引き続きデータを収集していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
申請課題の研究期間を1年間延長することができ、2021年度は、理工系専門科目として「電波工学」を例としてテキストマイニングによる項目関連構造分析の評価を中心に研究を行う。 (1) テキストマイニングによる項目関連構造分析では、学習項目からなる辞書作成が重要である。これまでに作成している「電波工学」の分野での学習項目の辞書は、第1級陸上無線技術士無線工学Bの既出試験問題から抽出しており、2021年度はこの辞書を用いて第2級陸上無線技術士無線工学Bの既出問題にKH-coderによる項目関連構造解析を行い、(第1級と第2級の)難易度の違い解析できるかを調べる。 (2) 学習項目の順序性の定量化とグラフ化を目的として、昨年度に引き続き、「電波工学」の分野での学習項目の共分散構造解析を汎用ソフトウェア「SPSS Amos」を用いて共分散構造解析を行う。 (3) これまでの項目関連構造分析の結果(重要な学習項目と学習項目間の関連性)を授業(熊本高専情報通信エレクトロニクス工学科5年の授業科目『電磁波工学』)に活用するために自習課題用のテキストを作成し、2020年度の授業で試行した。2021年度も引続きこの自習課題用のテキストを学生に試行する。この2年間の学生のアンケートをもとに、項目関連構造分析における最適なパラメータ(提示する学習項目数、学習項目間の関連数、順序性)の推定、そして関連構造分析の有効性や課題(問題点)について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては、2020年度の研究成果を発表する予定であった令和3年電気学会(2021年3月)が新型コロナウイルス感染症拡大防止によりリモート学会になり出張を取りやめ、また国立国会図書館での資料収集のための出張ができなかった。このため、旅費に残額が発生した。また、データ整理と辞書作成を学生雇用の謝金として執行する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休校や遠隔授業となり、学生雇用ができなかった。 2021年度は、データ整理と辞書評価のための学生雇用(対面ができなければリモートによる実施)、自習課題用のテキスト作成、学会発表など研究成果の発表用の予算を計画している。
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