本研究は、理工系専門科目における授業改善を目的として、授業内容の項目関連構造分析に基づく授業設計と学習支援を提案するものである。項目関連構造分析は、授業内容を多数の構成要素(学習項目)に細分化して、学習項目間の関連性と順序性を定量的に定め、授業科目を構成する学習項目の階層構造関連図として示すことである。本研究の初年度(2018年度)と2年度(2019年度)は、テキストマイニング用のフリーソフト「KH Coder」を用いて、熊本高専情報通信エレクトロニクス工学科5年の授業科目『電磁波工学』(以下「電波工学」)の項目関連構造分析を行った。2020年度と2021年度は、「KH Coder」を用いて「電波工学」の分野の学習項目の辞書作成を目的として、無線従事者国家試験問題(平成19年から令和2年までに実施された全36回の第1級陸上無線技術士無線工学B)から学習項目を抽出し、それを専門基礎と専門応用に分類し、それぞれの辞書を作成した。また、この辞書をもとに「電波工学」の各章の内容に対する共起ネットワークを考慮した授業の補助教材を作成し、授業で試行している。本研究では、学習項目間の関連性ととともに系統性や順序性を示す階層構造関連図を求めることを目的としていたが、共分散構造解析による学習項目間の順序性のデータ化を自動的に作成することは、学習項目数が多いことや学習項目間の関連が複雑で難しいことが分かった。 以上の研究成果をもとに、2021年度の後半から国家試験「第1級陸上無線技術士無線工学B」のScrapbox を用いた自学学習用のオンライン教材を作製することとした。2021年度はScrapbox の使い方や機能を学習したが、2022年度は国家試験問題のScrapbox 用への編集及び解答集、リンクする語句の整理を行っている。
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