研究課題/領域番号 |
18K02889
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武田 浩太郎 東北大学, 工学研究科, 講師 (80727214)
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研究分担者 |
池ノ上 芳章 東北大学, 工学研究科, 特任教授 (30790993)
祇園 景子 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (70533404)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発明者 / 権利付与 / 学生 / 指導教員 / 研究スタイル / 研究分野の文化 / 発明への寄与の解釈 / 研究室運営ポリシー |
研究実績の概要 |
本年度は、収集したデータから学生に対する発明者としての権利付与の実態について構造化を試み、その成果発表を行ってフィードバックを得ることを目標に取り組んだ。これまでのアンケート調査およびヒアリングから得られた21件の事例について分析を行った結果、理工系研究室における学生に発明者としての権利が付与される過程において、(1)研究における学生の位置付け、(2)権利者としての発明への寄与の解釈、(3)権利持ち分比の設定、の3点に多様性があることが明らかになった。(1)については、指導教員の研究スタイル(企業との共同研究への学生の参画のさせ方等)や研究分野の文化(指導教員と学生がフラットな関係の情報系、研究室ヒエラルキーが優先される工学系等)に多様性があることが明らかになった。(2)については、指導教員が重視する点が、厳密な発明への貢献、教育効果、研究室の伝統、のいずれかもしくはそれらの組み合わせにあることが明らかとなった。(3)については、いずれの事例も学生の持ち分比率は50%以内であったが、研究室のルールとして一律に定められているか、指導教員のポリシーで定められた基準に沿って配分されていることが分かった。全体として、(1)および(2)の解釈は指導教員の研究室運営ポリシーに依るために多様性が生じ、それが(3)の権利持ち分比率にも影響しているという構造を可視化することができた。指導教員の研究室運営ポリシーを規定する要因としては、当該教員の研究スタイルや研究分野の文化、研究室の伝統等が大きく影響している可能性があり、今後、さらなる分析が必要と思われる。これらの結果について、イノベーション教育学会第8回年次大会にてオンラインでのポスター発表を行った。学会参加者からは、得られた知見を教材化するだけでなく、情報発信を通じて、学生自身をマインドセットする取り組みの重要性について指摘をいただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19蔓延に伴う移動の自粛や感染リスク回避のために、対面によるヒアリング取材からオンライン取材に切り替えた結果、取材予約等の研究スケジュールを組み直すこととなったため、当初予定よりデータ収集が遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
昨今の社会風潮としてオンラインツールの導入・利用促進が進んだ結果、初対面でもオンラインによる取材実施の心理的ハードルが下がってきたことを追い風として、引き続き事例の収集に努める。また、調査分析の主対象を当初の学生から指導教員にピボットした結果、学生に対する発明者としての権利付与には指導教員の研究経歴が多分に影響している可能性が見えてきたため、既回答者への追加ヒアリングの実施や無記名による大規模アンケート調査の実施も視野に入れながら、さらに分析を進め、教材化に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19蔓延に伴う移動自粛および感染リスクを回避した結果、当初予定していた出張による取材や学会発表を行うことが不可能となったため。研究実施期間の1年延長を認めていただいたため、今年度の成果のさらなる分析のための無記名による大規模アンケート調査実施や、得られた知見の教材化・情報発信で使用する予定である。
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