研究課題/領域番号 |
18K02892
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池尻 良平 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (40711031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育工学 / 歴史学習 / 歴史教育 / 歴史的思考 |
研究実績の概要 |
2018年度は、歴史的思考力を発揮している際の理想的な思考や行為のプロセスに関する調査を実施した。方法としては、まず先行研究に沿って歴史的思考力の分類やプロセスを整理した。その後、歴史家を対象にした熟達者研究の文献調査を行い、初学者に比べて歴史家はどのような思考や行為を行うのか、また、初学者はどのような典型的な誤りをするのかを整理した。 その結果、歴史的思考力の中でも比較的初期の方で身につけるべき、史料を批判的に読む歴史的思考力と歴史的文脈を理解する歴史的思考力において、両者の違いに関する研究知見が多く収集された。具体的には、複数の歴史資料を扱って当時の歴史的文脈を理解する際、歴史家は「確証あるものにすること」、「出所を明らかにすること」、「文脈に位置付けること」といった方略を駆使し、歴史資料に何度も問いを投げかけながら、当時の歴史的文脈を織り上げていくことが確認された。一方、初学者の場合は、複数の歴史資料に対するカテゴリー付与を行うことが難しいことや、歴史的文脈に対してもステレオタイプな理解や、現代の文脈に沿った理解をしてしまうことが確認された。 さらに、このような初学者に対し、歴史家のような思考を促す教材についても文献収集を行った。その結果、『歴史家のように読む』や” Document Based Question”といった、複数の歴史資料を用いて課題に解答する教材がアメリカを中心に普及していることが確認された。これらの教材は本研究にとって示唆に富んでいるため、これらの構成や想定している学習プロセスを整理した。 以上の調査研究の結果は、日本の高校の歴史教育においても活用できるよう、論文にまとめて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、歴史的思考力を発揮している際の理想的な思考や行為のプロセスに関する調査を予定していた。その結果、先行研究の調査から、理想的な歴史的思考を段階的に体験できるデジタルゲーム教材に向けた十分な知見が収集できた。そのため、進捗状況としては概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に収集した知見をもとに、理想的な歴史的思考を段階的に体験できるデジタルゲーム教材のシナリオ作成と、デジタルゲームの開発を行う。シナリオについては、調査結果の知見をもとにした学習プロセスを軸に、複数の資料を用いながら推論しているデジタルゲームのシナリオを参考にしながら作成していく。また、デジタルゲームの開発に関しては、ゲーム開発を支援する既存ソフトを用いながら進めていく予定である。
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