研究課題/領域番号 |
18K02892
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池尻 良平 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任講師 (40711031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歴史教育 / 教育工学 / 歴史学習 / ゲーム学習 / デジタルゲーム |
研究実績の概要 |
2019年度は、前年度の調査を踏まえた上で、歴史的思考を理想的・段階的に体験できるデジタルゲーム教材をデザインした。 前年度の調査では、歴史の初学者は歴史資料の出所に注目することや歴史資料を論拠に主張することが難しく、現代の文脈で当時の歴史的事象を考えてしまうという、初学者ならではの典型的なつまずきを明らかにした。 そこで2019年度では、これらの調査結果、認知心理学や学習科学の知見をもとに歴史的思考の体験・学習を促せるデジタルゲーム教材の構成を検討した。その結果、歴史資料を用いた思考における上述した典型的なつまずきをもとに、コンピュータ上のキャラクターに誤った歴史的思考をさせ、その誤りを学習者に修正させつつ、個別に適切なフィードバックを与えることが効果的であると判断した。 以上をもとに、ノベルゲーム開発のフリーソフト「ティラノビルダー」を用いて、上記の活動ができる機能を実装したデジタルゲーム教材をデザインした。歴史で扱うテーマについては、現行の学習指導要領、新 習指導要領の両方で重視されているイギリス産業革命期の労働問題とし、1時間以内で終えられるものにした。シナリオの大きな流れとしては、産業革命は良い効果だけを及ぼしたという誤った思考をしたコンピュータキャラクターに対し、実際の歴史資料を証拠にしながら、労働問題という負の側面も発生していたことを学習者が主張する内容にした。 2019年度に行った、デジタルゲーム教材のゲームシナリオとルールについては論文にまとめ、学会で発表した。また、2018年度の調査結果については共著にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、デジタルゲーム教材のゲームシナリオとルールのデザイン、およびシステムの実装を予定していた。概ね予定通りに開発が終わっているため、おおむね順調に進展していると考えている。ただし、実装上の細かいデザインの外注については、高校生の体験をもとに行う方針だったが、コロナの影響で遅延が発生している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、高校生を対象に開発したデジタルゲーム教材を使用してもらい、ゲームの遂行度合いを評価したり、歴史的思考力を測定するテストや質問紙を事前事後で実施・比較したりすることで効果を検証することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度はデジタルゲーム教材のシステムの実装を予定しており、その分の費用が大半を占める予定だった。システムの基本的なデザインはフリーソフトを使って行い、高校生の体験をもとに行った後に実装上の細かいデザインの外注を行う方針だったが、コロナの影響で高校での体験会に遅延が発生したため、外注の費用が次年度に繰り越されている。また、同じくコロナの影響により、旅費が一部繰り越される形になっている。
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