課題「一人TT方式による教授行動の改善に関する実践的研究」の目的は,(1)一人TT方式による授業(教授行動)の特性について検討する,(2)一人TT方式での授業実践を行い知見を得る,(3)一人TT方式の授業実践の訓練方法を検討する,ことである。 平成4年度には,(A)一人TT方式での授業を行うための教材の開発,(B)一人TT方式による授業効果に関する理論的検討,を行った。 (A)一人TT方式での授業を行うための教材の開発:大学生・現職教員を対象にした,心理学,心理統計学,教育評価ならびに質的データ処理に関する,一人TT方式での教材の開発を行った。心理学については,13のスライド資料と説明動画,心理統計学については0のスライド資料と説明動画,教育評価については5つのスライド資料と説明動画,質的データ処理については,10のスライド資料と説明動画を作成開発した。 (B)一人TT方式による授業効果に関する理論的検討:一人TT方式の授業の利点として,授業時の授業者の認知的負荷の低減による,学習者の行動観察に対する教授者の認知的資源の余裕が生じることがある。さらに,自分の授業行動に対するメタ認知資源が増加することによる,授業改善の可能性が向上する。このような一人TT方式の利点を,過去の認知心理学的な研究をもとに理論的に考察を重ねた。具体的には,短期記憶,メタ認知,教材開発に関する関連資料を収集整理し,一人TT方式を教師教育や現職教員の研修に活かすための条件について考察を行った。 2018年度から2022年(コロナ禍による2年勘の期間延長を含む)の研究と開発によって,一人TTの方式による授業実践と教師教育における意義について研究を重ね,その長所と短所について明らかにすることができた。
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