研究課題/領域番号 |
18K02896
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小越 康宏 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80299809)
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研究分担者 |
小越 咲子 福井工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (70581180)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障害者支援 / 個別支援システム / プログラミング教育 / 就労支援 / 社会スキルトレーニング |
研究実績の概要 |
発達障害児者のキャリア教育を教育機関が積極的に支援することは非常に重要である。発達障害児者はIT分野、特にプログラミングにおいて才能があるものの、しばしば学習段階でのつまずきで学習意欲が低下するなど困難な面もある。そこで、楽しく取り組みながら論理的思考を高める新しい学習教材の開発を推進した。 また、発達障害児者は、せっかくITやプログラミングに関する知識や能力があっても、コミュニケーションに苦手意識があるために、就労まで結びつかないケースも多く、このことが非常に深刻な課題となっている。そこで、この問題を解決するために、社会スキルを獲得するための各種トレーニングシステムを開発し、プログラミング学習と併用しながら、就労に繋げるまでの総合的な支援体制づくりを行っている。 ①就職採用選考で企業が重視する要素として「コミュニケーション能力」が10年連続1位となっている。そこで、発達障害児者が苦手とする対人的スキル向上を目指し、状況における表情認知の能力の弱さに焦点をあて、行動・認知・生理指標の特徴から原因を解明し、それに基づくトレーニング方法の導出と支援システムの開発に取り組んだ。 ②日本が国際競争力を高めるためには、IoT・ビッグデータ・人工知能・ロボット・センサーを核とする技術革新が重要である。しかし、産業界で必要とされる技術者は2015年で約17万人、2030年には約59万人が不足すると予想されている(2010年国勢調査に基づく推計)。IT職は在宅勤務も可能であり、身体障害者や発達障害者にも適している。特に、発達障害をもつプログラマーの能力の高さが注目を浴びており、このような観点から発達障害児者の人材育成は国策にも適っている。そこで就労まで繋がるようなプログラミング教育方法の開拓および学習教材の開発に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、発達障害児者の特性に応じたインタフェースを持つ、プログラミング教材の開発を進め検証してきた。発達障害児者の脳特性から、プログラミングの失敗(コンパイルエラーなど)に対する合理的な判断(デバッグなど)の訓練や、上手く動いたときのモチベーション向上を誘発するようなインタフェースを実装し、発達障害児者のつまずきをなくし、プログラミングを楽しく学べるような工夫を教材に取り入れ、プログラミング教育を実践することができた。 また、将来的に就労に繋げていくためには、社会スキルの獲得が重要である。コミュニケーション能力の向上を目指すために、我々が開発してきた表情認知トレーニング、状況にふさわしい表情表出トレーニングシステムを活用しながら、感情豊かな会話を目指した発話トレーニングシステムも新たに開発した。 上記のプログラミング教育、および、社会スキルトレーニングにおけるスコアは、我々の開発したICT個別教育支援の日々の行動情報とともにシステムに統合され、支援のプランに活用することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、プログラミング学習教材においては、主に、アルゴリズム学習に焦点を絞ってきたが、より実践的な作業を想定して、与えられたアルゴリズムに対するコーディングやデバッグの作業など、多角的にプログラミングスキルを身につけるための学習方法を検討する。 また、より業務で必要不可欠となるコミュニケーションを介した仕事のやり取り、グループワークによる開発などといった練習を行えるような仕掛けを検討する。 さらに、我々の開発したICT個別教育支援システムのデータベースに統合される個人特性を分析することで、得意不得意などを捉え、得意な分野を伸ばし、不得意を克服することで自信をもって取り組めるような環境づくりを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本研究テーマの申請時に(学習者の認知特性を把握することを目的とした実験のために)経費に計上していた生体アンプの価格が採択時には高騰してしまったため、購入を再検討することとし保留にしたためである。 2018年度は、上記実験の代替策として、安価な生体アンプの開発キットを購入し、計測に必要とされる必要最小限のチャンネルのみを確保した計測装置を組み立て、実験を進めることとした。 次年度使用額の使用計画としては、2019年度は、前年度同様に生体アンプについては安価なシステムで計測装置を拡張しながら実験を進める予定である。 また、我々の(プログラミング教育を目的として開発した)オリジナルのプログラミング教材はクラウド型のアプリケーションであるため、この教材を稼働させるためにはサーバーの運用が必要となる。そこで、サーバー管理費に充当する予定である。加えて、プログラミング教材の利用者の学習履歴もサーバー側に記録する必要があり、この履歴データについては、我々の開発したICT個別教育支援システムのデータベースに付加する予定であり、このサーバー運用費にも充当する予定である。さらに、プログラミング教室の開催、学習者や支援者との連絡などの事務処理業務に対する人件費にも充当する予定である。
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