本研究の目的はマルチメディアを用いた外国語学習過程を心理学および認知言語学的立場から分析・解明し、それをモデル化することで、マルチメディアが学習者のイメージ・スキーマ形成に及ぼす影響とメカニズムを解明することである。現在マルチメディア教材開発は技術に対する安易な期待感から理論的根拠や徹底した検証なしに開発が進み、新しい技術が教材開発の需要を作り出している構図となっている。その結果、学校現場や外国語教育分野での活発な開発研究は進んでいるものの、それが成功している例は極めて稀であり、その理由は外国語学習者の学習過程にはまだ不明な部分が多いためであると考えられる。そこで、外国語の語彙学習においてイメージ・スキーマはマルチメディアによってどのように形成されるのか、そしてその結果を実際の教育現場で活用する方法について考察した。 今年度の実績は以下のようである。 どのようなイメージが語彙学習に役に立つのか、また、学習者はイメージと語義との関連性についてどう考えているのかといった研究は十分におこなわれておらず、イメージの選定に関しては外国語教育現場の教師個人の好みに委ねられていると言っても過言ではない。実際、現場の外国語教室では、教師が授業を準備する際にインターネットから拾ったイメージをスクリーンに映して見せたり印刷して配布したりしているのが現状である。そこで、ある語彙や文脈を表すイメージについての意見や情報をユーザから簡単に収集できるシステムを構築できれば、教材作成でのイメージ利用の利便性は大きく変化すると予想している。教師が授業や教材につかうイメージについてユーザからの意見を収集できるようなシステムを構築し、紹介した。個々の学習者による意見の違いや文化によるイメージ選択の相違の把握が可能になれば、学習者に適したイメージの提示に貢献できると期待している。
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