今年度は,過去の運用実験で収集した学習ログデータを用い,成績不振兆候者の早期発見手法を提案し,実際の授業に適用することによって,リアルタイムで成績不振兆候者を抽出することを目的としていた. しかし,本研究申請時には明らかでなかった2020年度からの大学の改組により,運用実験対象授業の配当年次が変更になり,授業の実施形態がクオータ制へ変更となった.これにより,2020年度は対象授業の開講がなく,学習データの蓄積ができなかった.また,クオータ制での授業実施方法や内容の変化と,オンラインでの実施となったため,以前の年度のデータとの比較が困難となった.そのため,予定を変更しプログラミング演習状況のリアルタイム可視化システムの機能強化や,それに伴う負荷の増加によるサーバの強化等を行った.一画面でモニタリングできるソースプログラムの数を以前の4名から16名に増やすなどし,対面式の演習と変わらない演習環境の構築が実現できた. 成績不振兆候者の検出については,2018年度と2019年度の授業で行った運用実験で蓄積したプログラミングの学習ログデータを用いて試験偏差値を推定し,成績不振兆候者を抽出する手法を提案した.演習システムで収集した定量的な学習データを用いて,試験成績を推定することによって成績不振兆候者の検出を試みた.各年度の授業期間全体の学習データの各項目に対して重回帰分析を行い,試験偏差値を推定した.チェックシートによるの成績不振兆候者の抽出を行う手法とは異なり,推定した結果が偏差値であるため,判定を行うためのしきい値を任意に設定可能とした. この提案手法を実際の学習データに適用し,成績下位者をどの程度抽出できるか検証した.その結果,下位者の抽出率は累積判定が優位であり,成績下位者を2018年度は約60%,2019年度は約80%と高い割合で抽出できた.
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