研究課題/領域番号 |
18K02907
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
塩澤 秀和 玉川大学, 工学部, 教授 (80328533)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 拡張現実感(AR) / 教育支援システム / 物理実験 / フィジカルコンピューティング |
研究実績の概要 |
本研究課題では,力学や回路などの物理の学生実験で用いる装置に小型のセンサーを取り付け,実際に測定した力のベクトルや電圧などの物理量を,AR(Augmented Reality;拡張現実感)技術を用いてカメラ映像にリアルタイムに重ね合わせて可視化することで,学習者のより直感的な理解を促すシステムを開発・評価することを目的としている。 令和2年度は,主に力学実験のシステム開発に取り組み,前年度まではArduinoマイコンと各種センサーで実装していたセンサーボックスを,M5StickCというIoT用小型端末に置き換えることによって,システムの大幅な小型化と信頼性向上を実現することができた。また,学習者が使う表示端末側のソフトウェアについても,ゲームエンジンのUnityを用いて完全に作り直すことで,当初から計画していたiOS, Android,Microsoft Hololensに対応したマルチプラットフォームのAR教材を実現することができた。さらに,ゲームエンジンを採用したことによる利点として,その物理シミュレーション機能を活用し,仮想的に質量等の物理パラメータを変更した場合のコンピュータシミュレーション結果を,現実の映像に重ねてAR表示する機能を提案・実装できた。以上によって,力学実験の教材システムとしては,研究開始当初に計画していた機能を実現することができたと考えている。 しかしながら,令和2年度は新型コロナウイルス対策に係る政府の緊急事態宣言への対応によって,前期において研究に大幅な遅れが生じ,特にユーザにシステムを使用してもらう評価実験を行うことができなかった。また,他の業務の逼迫によって成果発表等もほとんど行えなかった。そのため,研究期間を1年間延長し,今後,回路実験を含めたシステムの全体の感性と使用評価を行い,令和3年度に学会等で発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスへの対応によって,既に前年度の令和2年2月ごろから学生の登校が制限され,試作された物理実験の教材システムを実際にユーザに使ってもらうような評価実験(ユーザスタディ)が困難になり,学生の協力によってシステムを改良することも困難であるので,プロジェクトの進捗にやや遅れが生じていた。 さらに,令和2年度は当初から緊急事態宣言が発出されていたため,所属機関(大学)において教職員の通勤および学生の通学が大幅に制限され,また授業等のオンライン化対応のために業務が逼迫した。これらの原因によって,特に前期においてはプロジェクトの進捗にほぼ停止する事態となった。その後,後期には徐々に進捗を取り戻すことができたが,特にユーザにシステムを使用してもらう評価実験を行うことができなかったこともあり,年度を通して成果発表等はほとんど行えなかった。 そのため,研究期間を1年間延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの最終年度となるので,当初の最終年度の計画に基づき,具体的な実験コンテンツの開発と,ユーザに実際に利用してもらうことによる学習支援システムとしての評価実験(ユーザスタディ)を行う。また,学会や論文誌での研究成果発表に重点的に取り組む。 そのために,力学実験教材については,進捗が遅延している具体的な教材コンテンツの開発に重点的に取り組んでいく。小・中学生向けも含めた市販の物理学関係の実験キット等についてもさらに調査を進め,本研究のようなARによる情報表示が有効な実験テーマを考察し,具体的な教材の例として教材コンテンツの開発に取り組んでいく。また,システムの開発については前年度にゲームエンジンによる実装ができたので,同じプラットフォーム上回路実験教材を開発する。 その後,年度の後期では評価実験(ユーザスタディ)を行い,研究成果をまとめる。評価実験の実施にあたっては,このような社会情勢下でも多人数によるユーザによる評価実験を行うために,実験室の環境をカメラで撮影して学生は遠隔から画面(できればVR)越しにARで表示された情報を見るというような,遠隔アクセスの方法も実現できないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は当初から緊急事態宣言が発出されていたため,研究活動が大幅に制限され,また,研究以外においてはオンライン化対応などによって業務が逼迫した。これらの影響によって,特に前期においてはプロジェクトの進捗がほぼ停止し,予算が使用されない事態となった。その後,後期には徐々に進捗を取り戻すことができたが,依然として学生アルバイトを使用することができず,十分な評価実験もできない状況であった。そこで,このような状況に対処するため,研究期間1年間を延長し,開発したシステムを実行するためのハードウェア機器の購入を次年度に回す判断をした。また,成果発表等に関しても,進捗の遅延によってほとんど行えず,関連分野の調査活動についても,学会等がオンライン化されたために旅費等が使用されなかった。 1年間の研究期間延長のために最終年度となった令和3年度は,本来最終年度に実施するはずであった研究計画に基づいて予算を使用する計画である。
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