研究課題/領域番号 |
18K02908
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
森 玲奈 帝京大学, 学修・研究支援センター, 准教授 (70588087)
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研究分担者 |
北村 智 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (40511960)
孫 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40637039)
渡辺 雄貴 東京理科大学, 教育支援機構, 准教授 (50570090)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ワークショップ / 高齢者教育 / 健康教育 / ヘルスリテラシー / 情報検索 / スマートフォン / 自己調整学習 |
研究実績の概要 |
高齢者の学習課題の一つに,健康に関する情報(以下,健康情報)の取得がある(森 2017).60歳以上の者が行う生涯学習で健康法,医学,栄養などの健康に関わる問題についての学習はニーズが大きい(内閣府 2018).そして,日本が迎える超高齢社会における課題のうち,医療・介護・健康の課題解決へのICT利活用の期待は大きい(総務省 2013). 健康情報の取得に関わる重要な概念にヘルスリテラシーがある.ヘルスリテラシーとは, 「情報を得た選択(Informed Choice)によって,健康リスクを減少させ,生活の質を向上させるために,健康情報を探し,理解し,評価して利用できるという,生涯を通して発達する幅広い範囲のスキルと能力」と定義される(ZARCADOOLAS et al. 2005). 高齢者はヘルスリテラシー不足の影響を強く受けやすいことが指摘される(中山 2017).また,加齢によってヘルスリテラシーは低下する傾向にあると言われている(KOBAYASHI et al. 2015).しかし,縦断的コホート調査の分析ではインターネット(以下,ネット)の活用が高齢者のヘルスリテラシーの維持に寄与することが示されている(KOBAYASHI et al. 2015). このように,高齢者の学習課題としてICTを活用したヘルスリテラシーの維持・向上が指摘できる.一方で,高齢者のネット利用はメール利用にとどまりがちで,ネットの活用可能性への理解不足や利用への不安がICT活用への障害となりうる(橋元 2017).そこで本研究では健康情報の取得へのネットの活用可能性の理解と利用の自己効力感の向上を促すワークショッププログラムを設計・実践・評価することを目的とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では高齢者の学習課題の中で健康に関する学習に焦点を当て,自己調整学習理論を参照し,主体的に健康について学ぶことができるワークショップを企画・運営・評価することを目的とした.ワークショップ「すまけん」は,参加者に健康情報の取得へのネットの活用可能性の理解と利用の自己効力感の向上を促すものである.ワークショップは秋田県北秋田郡五城目町で2回,秋田県秋田市で1回実施した.五城目町での募集は町役場作成のチラシを配布,秋田市での募集は秋田魁新報社の新聞広告によって行った.応募した参加希望者は全て受け入れた.3回の実践で合計28人が参加し,うち20人がスマートフォンを使用していた.年齢は61歳から83歳,平均で71.83歳,男性が17名,女性が11名だった. 事前および事後質問紙でNakayama et al. (2015)のヘルスリテラシー尺度47項目とスマートフォン関連の5項目を尋ねた.その結果、事前に比べて事後のヘルスリテラシーの自己効力感並びにスマートフォン活用の自己効力感が高まっていた.すまけんワークショップ内では,殆どの参加者が健康情報の探索について自力で行うことを学んだ. 成果は国際会議や国内研究会で報告した。 さらなる効果を求め、ワークショププログラムを改良し2回(間を2ヶ月空ける)連続のワークショップを行うこととし、日野市百草にて実践を14名に対し行ったが、1回目実施後に新型コロナウィルスの問題が発生し、2回目の実践を中止せざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの問題の収束に目処が立たないため、対面におけるワークショップ開発を中断し、秋田で行った実践で見えてきた課題に関する調査研究に切り替えることを考えている。具体的には、高齢者はスマートフォンを使った情報検索のどのような段階で行き詰まるのか、検討したいと考えている。
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