研究課題/領域番号 |
18K02912
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
加藤 由樹 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (70406734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感情伝達 / テキストベースコミュニケーション / モバイル端末 / モバイルラーニング / 情報モラル |
研究実績の概要 |
令和2年度は、世界的にコロナウィルスが広がり、その状況は現在も続いている中で、オンライン学習が一気に普及した。一方で、eラーニングやモバイルラーニングなどの遠隔教育においては、学習意欲が低下したり、そもそも学習をしようとする気にならなかったり、学習活動が遅延したり、結果的にドロップアウトにつながる傾向が高いことが指摘されている。本研究課題は、モバイルラーニングにおいて、学習者の感情面を支援する方法を検討するための基礎研究である。学習者の学習への動機づけには、コミュニケーションが重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、特にインターネット上のコミュニケーションではすれ違いが生じやすく、トラブルに発展しやすい。つまり、コミュニケーションは、学習にとってポジティブなだけでなく、ネガティブに働く可能性もある。本研究では、テキストベースの電子メディアコミュニケーションに注目し、メッセージの送信者と受信者の間の感情面のやりとりについて、基礎的な実験や調査を実施している。 令和元年度は、スマートフォンを用いたメールコミュニケーションにおける感情伝達に関して、様々な感情面を分けて、それぞれを測定する実験を行った。この令和元年度の研究では、実験参加者を二人一組のペアにして実際にやりとりを行ってもらう形式のため、そこでやりとりされたメッセージは、ペアの一人だけが感情面を評価することになった。そこで、令和2年度は、前年度の実験で得られたメール文を実験材料として、各メール文について60名の実験参加者に提示し、感情面を評価してもらう実験を行った。その結果、メッセージの書き手の感情面は、実際の感情状態よりも、伝えようと表現した感情に近い感情を読み手が読み取ることがわかった。また、男性の方が相手の感情をメッセージからより正しく読み取ったと確信するが、実際の正確さは女性の方が高いこともわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度の研究計画は、やや計画よりも進まなかった。その原因はコロナウィルスによる感染防止のため、対面での実験や調査が難しくなったことである。特に、この研究課題では、電子メディアコミュニケーションにおける感情面に関する詳細なデータを収集する実験が対面で実施できなかった。しかし、何もしなかったわけではなく、オンラインでできる形での実験及び調査を実施した。実験では、まず、前年度に収集した電子メール文とそのメールに関する書き手の感情データをセットにしたものを実験材料として準備した。書き方や表現方法を異なる18種類の電子メールを実験参加者に提示して、メール文から読み取れる感情および読み取った感情の正確さの程度について、実験参加者に回答を求めた。実験は、首都圏の大学生60名をオンライン上に集め、1時間程度の時間で、回収された。この実験は、本来の二人一組のペアによる実際のテキストコミュニケーションを行う実験では得られにくい成果も得た。それは、メール文の表現の違いよる、感情の読取の正確さの違いや、性差に関する成果である。この成果は、令和3年度に公表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も実験を予定している。おそらく本年度もコロナウィルスの感染防止対策は必須であり、実験参加者を集めて対面で行う実験は難しいと考えられる。しかし、オンライン上での実験の工夫をより一層行うことで、より実際的なデータの収集の可能性もある。更にアンケートベースのオンライン調査も行っていく。 令和3年度は、本研究課題の最終年度であり、本課題は基礎研究ではあるが、より教育場面、学習場面への具体的で応用的な示唆を得られるような検証実験も実施していく予定である。具体的には、コロナ禍でのオンライン学習の普及や、さらには在宅勤務など、これまでにない学習や仕事の形を、多くの人が経験したことも踏まえ、オンラインでのやる気や、その維持とコミュニケーションとの関係を感情面から検討していきたい。最後に、令和3年度は特に、本研究課題の成果の公表も、計画的に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、令和元年度末からの継続で、国内学会および国際会議への参加がコロナウィルス拡大の影響でキャンセルになったため次年度使用が生じた。令和3年度も、国内外の学会の多くがオンライン開催になると考えられるため、旅費の支出は令和3年度も減ると考えられるが、オンライン実験やオンライン調査など、本研究計画時とは異なる支出が増えると考えられるため、コロナ禍での研究遂行を効率的に行うために使用する計画である。
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