本研究は視覚効果を体感できる図形アニメーションに着目し,並列プログラミングの学習意欲を高く維持できる学習環境と学習教材を構築することを目的としている. 令和5年度は並列プログラミングの初学者を対象とし,これまでに開発してきた並列処理フレームワークの適用実験に取り組んだ. 具体的には,本学(大阪工業大学)の大学院情報研究科および情報科学部に所属する学生を対象とした授業(100分授業を1回)において,並列プログラミングに関する演習を実施した.この授業では,授業中に各受講生が持参した私有のノートPCに並列処理フレームワークを導入させ,並列プログラミングに関する基礎知識について説明した後,様々なサンプルプログラムを入力および実行させる形で実施した.特に,競合による不具合の発生,惑星運動シミュレーションの高速化を体感させる内容とした. 授業後のアンケートでは,「並列処理時に発生する競合についての説明が本フレームワークによってよくわかった」,「並列処理による高速化を実感できた」,といった結果が得られた.また,自由記述欄には「図形描画というわかりやすい動きで見れたことがよかった」,「1回の講義で並列処理の感覚を掴むにはちょうどよい」,との感想も得られ,総合的に肯定的な評価であったと言える. 従来より並列プログラミングの演習で題材となることが多い数値計算問題などは問題自体が難解であり,また,実行結果が文字列を主体とするなど,並列プログラミングを簡単に紹介する形式の授業では初学者に興味を持たせることが容易でなかった.しかし,今回の適用実験の結果より,本フレームワークは並列プログラミングの演習教材として初学者に興味を持たせることができていると考えられる.これらの成果は情報処理学会全国大会において発表した.
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