研究課題/領域番号 |
18K02917
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (50368172)
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研究分担者 |
岡崎 裕之 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (50432167)
布田 裕一 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 准教授 (50706223)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 情報セキュリティ人材育成 / 暗号技術学習支援 / eラーニングシステム / 形式的暗号プロトコル安全性検証ツール / CAI教材 / Proverif / Moodle / Virtual Programming Lab |
研究実績の概要 |
我が国において情報セキュリティ人材の育成は急務である。暗号技術は情報セキュリティを実現するための基盤要素であり、暗号を専門とする研究者や技術者のみならずネットワークエンジニアや運用者にとっても暗号技術に関する知識の習得は必須である。しかしながら、暗号技術の利用者向けの教育環境や教材は十分であるとはいい難い。 形式的暗号プロトコル安全性検証ツールを用いることにより、既存の教材では実現し得ないような実際の暗号技術の動作や攻撃を、学習者が設定した暗号システム上でシミュレーションしながらインタラクティブに学べる。このツールを用いた教材システムを開発することで、学習効果のより高い教材を実現できるため、本研究課題の成果は暗号技術の基礎知識を身に着けたセキュリティ技術者の育成に大きく貢献できる。 本研究課題を遂行するために、(1)個々の暗号技術とその学習教材の開発、(2)暗号技術の組み合わせによる暗号プロトコルの構成に関する学習教材の開発、(3)上記(1),(2)を統合する教育用ユーザインタフェースおよび教材システム開発と評価、を行う予定である。 本年度は、(1)については、暗号プロトコルの安全性自動検証ツールであるProVerifにより暗号機能の形式化を行った。(2)の暗号技術の組み合わせの教材については着手したところである。(3)については、MoodleにVirtual Programming Lab (VPL) をプラグインとして組み込んだeラーニングシステムを仮想マシン上に構築して(1)のProVerif 教材を導入した教育システムのプロトタイプを試作した。更に、試作した計算機援用による暗号技術の基礎知識、利用方法を学習する演習授業を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行するために、(1)個々の暗号技術とその学習教材の開発、(2)暗号技術の組み合わせによる暗号プロトコルの構成に関する学習教材の開発、(3)上記(1),(2)を統合する教育用ユーザインタフェースおよび教材システム開発と評価、を行う予定である。 平成30年度は、(1)については、暗号プロトコルの安全性自動検証ツールであるProVerifにより基本的な暗号機能の形式化を行った。この成果の一部を利用して暗号プロトコルに関する教育を信州大学の学部3年生に対して行った成果を第5回 実践的IT教育シンポジウム rePiT2019 in 愛媛(ソフトウェア科学会、enPit2共催)において発表した。本発表により、rePiT2019 の優秀教育実践賞を受賞した。更に、本研究成果をまとめたものを、日本ソフトウェア科学会「コンピュータソフトウェア」に「形式的安全性検証ツールを用いた暗号教育の実践とそのe-Learning教材化の課題について」として投稿済みである. また、教育用ユーザインタフェースとしては、eラーニングシステムとして定評のあるMoodleを採用し、プログラミング教育用のプラグインであるVirtual Programming Lab (VPL) を組み込んだシステムを仮想マシン上に構築することで、(3)の教育支援システムのプロトタイプを開発した。更に、暗号プロトコルの安全性自動検証ツールProVerifを開発した教育支援システムで利用可能となるように導入し、(1)で開発したProVerifによる教材を組み込んだ。この成果を国内シンポジウム「第41回情報理論とその応用シンポジウム(SITA2018)」のポスターセッションおよび国際会議「Internet Conference 2018 (IC2018)」のポスターセッションにて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を遂行するためには、前述のように (1)個々の暗号技術とその学習教材の開発、(2)暗号技術の組み合わせによる暗号プロトコルの構成に関する学習教材の開発、(3)上記(1),(2)を統合する教育用ユーザインタフェースおよび教材システム開発と評価、を行う必要がある。 (1)については、平成30年度に基本的な暗号機能の形式化を行なった。令和元年度は、(1)で開発したProverifによる暗号機能の形式化を教材とする実践的教育をさらに発展させる予定である。 (2)については、現在まだコンテンツが充実していないので、令和元年度には、(2)の暗号技術の組み合わせによる暗号プロトコルの構成に関する学習コンテンツの開発を行い、コンテンツを充実させていく予定である。 (3)については、平成30年度に試作したeラーニングシステムのプロトタイプに対して、複数端末による同時接続実験を行うことにより実用的な負荷に耐え得るか否かを検証する予定である。また、このシステムに対して実験を通して様々な視点から実用化の際に他に問題がないか等を検証し、その結果をフィードバックしてより使いやすいシステムに改善していく予定である。更に、試作したプロトタイプをもとに外部からアクセスできる実用的なシステムを構築していく予定である。 また、申請者等が担当する情報セキュリティに関連する講義やゼミ等の実際の教育現場において、本研究で開発してきたCAI教材システムを利用した授業を行い、本教材の教育効果を評価し、随時フィードバックして更に改善を進める。 本研究で開発したコンテンツを用いて、平成30年度に信州大学で行ったCAI教材によらない演習と令和元年度以降に開発するCAI教材システムによる演習について、学生によるアンケートや成績等を比較することにより、本研究のCAI教材システムの教育効果を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】本年度に出張を予定していた研究会に参加しなかったため、および,教育コンテンツ開発で使用する計算機及び関連物品の購入が遅れたため、次年度使用額が生じた。 【使用計画】令和元年度の出張に使用する予定である。また、令和元年度に上記の計算機及び関連物品を購入する予定である。
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