研究課題/領域番号 |
18K02921
|
研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
山田 耕太郎 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (20353120)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | プログラミング教育 / プログラミング的思考 / ブロック型言語 / Blockly / 迷路ゲーム |
研究実績の概要 |
本研究はブロック型言語のBlocklyを利用し,プログラミング中に学習者が行う操作(ブロックの移動や変更,削除など)に応じてBlocklyが発するイベントメッセージを収集・分析することによって学習者のプログラム構築過程を把握し,効果的なプログラミング教育の要因を明らかにすることを目的としている。イベントメッセージの収集はインターネットを通じて行うため,これまでに常時SSL化とデータベースの暗号化を施したサーバを構築し,イベントメッセージを捕獲してデータベース化する仕組みを作った。しかし,Blocklyプログラミングのための教育コンテンツについては,カスタマイズブロックによるオリジナルコンテンツの制作を行っていたが,新型コロナウィルスの感染拡大によるオンライン授業への一斉切り替えと,その授業形態に合わせた教材の変更や新規に生じた業務のために,本研究用の教育コンテンツ制作に十分な時間を割くことができない状況が半年以上続いた。そこで,オリジナルのコンテンツを用意するのではなく,Googleが公開している教育ゲームのひとつである迷路ゲーム(Maze)を本研究用のサーバに移植し,イベントメッセージの収集を行うWebアプリケーションとして実装した。なお,この移植についてはGoogleが定めるオープンソース規約に基づいて行っている。迷路ゲームはプログラムに従って画面上のキャラクタが動くものであるが,動きをプログラムする思考過程は子ども向けのロボットプログラミング教育での思考過程とも共通性が高いと考えられるため,本研究の成果はロボットプログラミングでの教育効果との比較・検証にも使えるものと考えている。 また昨年度に引き続いて,広島市内の小学校4校でプログラミング教育を実施し,電気の利用や性質をプログラミング的思考で整理したり理解を深めたりすることができることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要欄で述べたように,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う休校措置や授業形態の変更によって優先度の高い新規の業務が数多く発生し,本研究の優先度を下げざるを得なかったことがこの度の遅れの主な原因となっている。ただ,当初の研究計画では研究を推進していく中でプログラミング教育のためのオリジナルコンテンツや教材を新規に開発していくこととしていたが,その開発が遅延している中でコロナ禍が加わり,更に遅延が進んだ状態に陥ったことも事実である。そこで現在の研究計画を練り直し,進捗状況を根本的に改善して今後の研究を加速するための方策を検討した。その結果,Googleがオープンソースとして公開しているBlocklyの教育ゲームを本研究用のコンテンツとして移植可能であることが分かったため,公開されている教育ゲームの中から迷路ゲーム(Maze)の移植を行い,本研究の目的であるイベントメッセージの取集が行えるWebアプリケーションとしてサーバに実装した。この方策ではゲーム本体のプログラムが全て流用できるため,コンテンツ開発の工程を当初よりも短縮することができた。従って,今後もこの方策によって進捗の改善を図ることとする。 また昨年度,学習者のプログラミング構築過程を把握する上で重要度の低いイベントメッセージを間引くことを検討し,そのことが進捗に影響していることを報告したが,その後間引きを行わずに全てのメッセージを分析対象とすることで結果の信頼度を担保すると同時に進捗への影響を取り除くこととした。ただし,このことはサーバが処理するデータ量が増加することを意味しているため,サーバの処理能力の増強が必要となる可能性がある。現在このことについて調査と確認を行っているところであるが,処理のボトルネックとなりそうなタスクの特定とその対応策が明らかとなりつつあるため,進捗の改善が図れる見込みとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の進捗状況と新型コロナウィルスの感染拡大の影響を考慮し,研究計画の見直しを行った。研究実績の概要と現在までの進捗状況のところで述べたように,見直しによって既に計画を変更して実行に移している項目は,プログラミング教育のための教育コンテンツの開発と,収集するイベントメッセージの間引きの取りやめである。教育コンテンツの開発については新規で行うのではなく,Googleがオープンソースとして公開している教育ゲームを移植することで進捗状況を改善することができたが,それだけではなくゲームが学習者のプログラミングレベルを段階的に引き上げていく構成となっているため,学習者のつまづきの把握が容易になるという利点も取り入れることができた。現時点で移植したゲームは迷路ゲームだけであるが,他に7種類のゲームが公開されているため,進捗改善と同時にコンテンツを充実させるためにも順次他のゲームを移植する方針としている。イベントメッセージの間引きの取りやめについてはサーバへの負荷が懸念されるが,学習者のプログラミング過程を詳細に知る上でどのメッセージデータも欠かせないと判断したことと,サーバの負荷を緩和するための対応策に見通しがついているため,全メッセージデータを収集して分析の対象とする。ただし,本研究は授業実践を行いながら推進するものであるため,学習者の人数規模によってはサーバをリプレースして増強するなどの対応が必要となる可能性がある。この場合の対応についてはクラウドのサーバやサービスの導入を考えており,必要なサーバスペックやサービスについては既に具体的な検討を行っている。全メッセージデータの収集は,学習者のプログラミング過程をアニメーションとして再生し,学習者の行動を可視化して確認するシステムの構築に繋げることができるため,可能な限り全てのメッセージデータを収集する方策で研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大によって学会や研究会が現地開催されなくなったこと,休校措置やオンライン授業のための新規業務が増加したこと,小学校を対象としたプログラミング教育の実施校が昨年度よりも減少したことなどによって研究活動を縮小せざるを得ず,次年度使用額が生じる結果となった。本報告書執筆時点においても感染状況がいつ改善し,研究活動を通常レベルに戻せるのかがまだ不透明であるが,活動可能な範囲で成果が最大限得られるよう,適切に助成金を使用していく。
|