研究課題/領域番号 |
18K02922
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
戸川 聡 四国大学, 情報処理教育センター, 教授 (20399166)
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研究分担者 |
金西 計英 徳島大学, 高等教育研究センター, 教授 (80204577)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育支援システム / 適応的リスク管理 / マルチクラウド活用 / コンテナ型仮想化 / 危機管理 |
研究実績の概要 |
本研究では,教育支援システムに対する危機管理フレームワークの構築につき研究している.地震や津波など壊滅的な自然災害に対するリスク管理はもとより,大規模集中豪雨など一般的な自然災害の激甚化に対しても対策を講じる必要がある.加えて東アジア地域における安全保障問題の変動も踏まえ,単なる災害復旧としてのリスク管理のあり方では,多様化するリスクに対し,教育支援システムを保持することは困難になりつつある.災害や地域安全保障の問題に関わらず,いずれの要因において教育支援システムが失われたとしても,我々が失うものはシステムと教育コンテンツだけではない.これは,教育支援システムに蓄積される学習履歴の喪失も意味し,ラーニングアナリティクス実践のためにも,学習履歴を含めた教育支援システムの保全は必須課題と言える.これらの問題に対し,本研究では適応的危機管理フレームワークを提案し,その実装と効果検証に取り組んできた. 計画二年目となる本年度は,提案する適応的危機管理フレームワークの実装に取り組んだ.特に,脅威の種類に応じた教育支援システム減災戦略の作成と,ポリシー化した減災戦略を適応的に実施するためのシステム減災ポリシー選択サービスの実装を行った.また,これらのサービスを構築中のプロトタイプシステムへ実装し,有効性の検証と問題の洗い出しを行った. 今後,プロトタイプとして実装した適応的危機管理フレームワークに対し,明らかとなった問題に対する解決方法を検討し,システム設計にフィードバックする.これにより,提案する適応的危機管理フレームワークとプロトタイプシステムの熟成を進める.加えて,2020年初頭より大きな問題となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する教育支援システムでの危機管理においても,提案する危機管理フレームワークでの適用可能性につき,検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画として示した「マルチクラウド連携機構開発」と「システム減災ポリシー定義・開発」につき,システム減災ポリシーの定義とその開発による適応的減災戦略の実行機構は,各拠点に設置されたプライベートクラウドを対象として実装されたプロトタイプシステムにより,その有効性が確認されるとともに問題点の洗い出しが実現できている.これまで設計,実装の上,検証してきたこれらの成果により,我々が目指す教育支援システムの適応的危機管理フレームワーク構築に向け,前年度に続き,引き続き知見を得ていると考える. これらの成果は,関連の国際会議および国内発表として報告済である.しかし,新型コロナウイルス感染症の世界的流行により,一部の成果発表は取りやめざるを得なかった.一方で,これら新たなリスクの出現が認められることから,この変化に対し,如何に適応的なシステム保全性とサービス継続性を確保するか,その検討が求められる.
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今後の研究の推進方策 |
課題進捗における自己点検評価で示した通り,教育支援システムの保全とサービス継続性担保を目的としたリスク要因多様化への対処が求められる.この実現のため,計画立案時よりさらに詳細なリスク対応戦略の洗練と実装が必要である.この上で,適応的危機管理フレームワークのさらなる最適化を試みる予定である. なお,クラウド関連技術とその周辺技術の進展は目覚ましく,かつ,これらの制御に機械学習関連の知見が組み入れられつつある.一方,新型コロナウイルス感染症がもたらした社会的影響は,教育支援システムのあり方自体に,ある種のパラダイムシフトをもたらしつつある.これらの変化への適応可能性の検討も含め,提案するフレームワークの洗練に取り組む.
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