VR計算モデルの構築として,患部を点群でモデル化した.具体的には,リンパ節癌患者の顎顔面触診訓練を想定し,患者CT画像から点群計算モデルを作成した.特に,形状再現性(点数),弾性係数(硬さ)分布を考慮したモデルを作成できた. 新たな計算法として,粒子法に基づく計算プログラム(粒子法解析プログラム)作成した.具体的には,基本形状点群モデル(半球,直方体,円柱+半球)に対して,触診部の弾性変形計算プログラムを作成し,モデルの点群の粗密,触診圧,触診位置に対する変形量および応力の計算精度について検討した.特に,従来は有限要素法(材料力学)と応力定義が異なるため比較できなかった応力精度について,von Mises応力を用いる独自の応力評価法を提案し,精度の検討を可能とした.その結果,応力についても有限要素法と定性的に一致し,定量的にもある程度の精度で一致することが確認できた. 新力覚システムとして,静電容量式力覚センサを作成し,システムに組込んだ.この力覚インターフェースは,ペン型に比べ,リアルな触診感が得られるもので,人工肌ゲルを使用した患部モデルである.患部に埋め込むしこりについては,硬さを能動制御できる負圧粒子剛性要素を新たに採用した.これは,しこりを加圧する方式に比べ,破裂の危険が無く患部のしこり硬さや形状を自由に可変できる. 全体として改良の余地はあるものの「実用システムとしての基本性能を有していること」が確認できた.学術的には,粒子法による非一様剛性モデルに対する大変形計算が可能であることが検証できた.さらに,触診を対象とした患部(生体)の変形解析として有用であることを確認した.新開発の静電容量式力覚インターフェースを用いた場合,しこり位置を感じることを確認した.しかし,医師にとって若干違和感があるため,この点については改善の余地があることが指摘された.
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