研究課題/領域番号 |
18K02930
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
加藤 直樹 東京学芸大学, ICTセンター, 准教授 (00313297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 情報活用能力 / 論理的思考 / 小学校 / 教科等教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を,小学生の発達段階で育成できることに考慮しつつ,情報科学・情報工学の視点から明確にし,教科教育の観点か ら,その力の育成を教科の学びに位置付けたプログラミング体験として具体化することである. この目的を達成するために,2019年度は,2018年度に引き続き,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を構成する要素を育むプログラミング体験を,教科の学習に組み込んだ授業案を設計し,協力校での実践を元にした評価・再設計を行い,授業案を洗練し,これらの成果を元にしてカリキュラムモデルを開発した.そのデザインの際には,2020年度よりプログラミング教育が必須となる学習指導要領が実施されるが,完成年度を迎えるまでは,2020年度以降の入学生以外が系統的なプログラミング教育を受けることができないことに対応させることにも考慮した. 具体的には,第一に,開発したカリキュラムモデルのwebサイトで公開するとともに,小学校の研修会や研究発表会における講演で紹介をした.加えて,その一部分を元に教材出版社の教材作成に協力した.第二に,2019年度に研究会で発表した理科におけるプログラミング教育の実践を元に,令和2年度版の小学校教科書の監修や指導書の執筆を行うとともに,論文として発表を行った.第三に研究を通して得られた知見を元に,教員養成用の教科書(書籍)の執筆を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,特に,算数及び理科の全学年全単元を対象にして,プログラミング体験を組み込んだ授業案の設計を進め,そこから論理的思考力を構成する要素の抽出し,カリキュラムモデルを開発していくことを予定していた. 研究実績の概要に書いたとおり,2019年度は順調に進展した.算数及び理科に限らず,低学年の生活,中高学年の総合的な学習,さらに,社会,英語,音楽,図工,家庭なども含め,体系的な学びを実現するカリキュラムモデムの雛形を開発した.ただし,論理的思考力という抽象度の高い要素の抽出は十分な成果は得られていない.授業実践については2018年度ほどではないが,様々な学校の協力によって開発したカリキュラムの検証を行うことができ,今後の研究の方向性を定める知見を得ることができた. 成果の公表としても,webサイトを通した公表,AI時代の教育学会論文誌への掲載,令和二年度小学校指導書(理科6年)の執筆,教員養成用の書籍の執筆,教材会社作成のワークシート教材の開発,および地域小学校の研究発表会における講演等の実施など,十分な実績を積み重ねたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
2020 年度は協力校においてこれまでに開発したカリキュラムモデル雛形を元にしたプログラミング教育を実施し,その成果を元にカリキュラムモデルの改良を進め,また,公開研究授業やフォーラムを通して開発したカリキュラムモデルの普及に努める計画であった. しかし,COVID-19への対応によって,全面的な休校処置や分散登校が行われ,現在,授業時間が圧迫されている状況にある.そのために,プログラミング教育の実施が積極的に行われない,研究への協力が頼みづらい状況になる可能性がある. 本研究では,授業実践が非常に重要な位置付けにあるが,この点を解決することは難しい.そのこで,2020年度は,開発したカリキュラムモデル雛形を実施するためのガイドラインやその実施を助ける教材の開発を中心に進めていく.また,それらの活動を通して,カリキュラムモデルを見直し,ブラッシュアップをしていく. また,公開研究授業やフォーラムも次々に中止の連絡がきているため,普及の方策として,webサイトや出版を中心にすることを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に実践環境を整備する予定であったが,物流や実践校の調整ができなかったため,2020年度に繰り越すこととした.また,学会発表,それに伴う旅費も執行できなかったため,2020年度に繰り越した.繰り越した費用は,機材整備およびカリキュラム普及のためにあてることを予定している.
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