研究課題/領域番号 |
18K02939
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
牧野 治敏 大分大学, 高等教育開発センター, 教授 (30165683)
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研究分担者 |
藤井 康子 大分大学, 教育学部, 准教授 (10608376)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 総合的な学習の時間 / アートとサイエンス / 色の学習 |
研究実績の概要 |
中学校の学習カリキュラム、特に総合的な学習の時間において、教科横断型のカリキュラムの開発を目指した研究である。本年度はアートとサイエンスを融合する学習として、サイエンスの観点からアートへの目を向けさせる手法として、中学校1年生理科における「光の進み方」に関する単元に着目した。 理科の授業では、安岐中学校の理科担当の教員が授業を担当したが、光の進み方について、プリズムや水を使ってグループによる実験を丁寧に行うことで、学習の理解と定着を図った。その後、光の学習のトピックとして「光の色」に関する授業を研究代表者が実施した。 通常の中学校1年生の光の学習では、光の進み方(反射、屈折)を白色光により実験・観察するが、その様な白色光は日常生活での光とは異なるものである。また、アートに関連付けるためには多彩な色についての学習が不可欠である。そこで、光の学習の最後の授業として、光の三原色とその混色について、実演を主として授業を行った。 授業終了後にアンケート用紙による調査を行い、学習の定着度と、光に対する捉え方を記述させた。アンケートの記述から、ものの見え方と光の性質について、生徒達自身で関連付けることは難しいことが示唆された。 また、前年度に実施した津久見市立第二中学校、国東市立安岐中学校での実践については、日本生活科・総合的学習教育学会第28回大分(佐伯)大会において報告した。 今後の研究課題として、色と光との関連を整理できる教材の開発が必要であるとともに、アート分野からのアプローチも試みる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究において、行政機関と中学校との連携において中心的な役割を果たす「地域の色・自分の色」実行委員会は、大分県行政職員、教育職員の人事異動により、事業の継承が困難になり大分県立美術館の全面的な協力が得られなくなった。また、前年度まで共同研究関係にあった津久見市立第二中学校の協力が得られなくなった。そのため、もう一つの協力校である国東市立安岐中学校を研究フィールドとすることで、計画の再構築、同中学校だけで研究実践を行った。 このような状況下で、本年度はサイエンスとアートを融合したカリキュラムを構築する際の基礎データの収集のため、本研究代表者が中学校で理科を主としてアートに関連する授業を行うとともに、生徒達を対象としてアンケート調査を実施した。 当初計画していた地域と連携した発表会、大分県立美術館によるイベントについては、先の「地域の色・自分の色」実行委員会の性格が大きく変わったため、本年度は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、総合的な学習の時間を実現するための教科横断的な学習内容を模索する。研究対処とする生徒達の学年進行に合わせた授業実践を念頭に置くため、中学1年生向けに「光と色」をテーマとした授業を実践したので、次の段階ではサイエンスの領域でアートを志向する単元として、中学校2年生を対象に「化学変化」で色に対する興味や関心を伸ばす授業を実施する。また、造形の分野にも着目し、理科の授業では電流や磁界による造形についても試みる予定である。 一方のアートからサイエンスへのアプローチとして、色や構造に着目した作品の作成を目的とした授業を実施し、その際の生徒達の変容についてデータを収集する。 上記の実践については、日本科学教育学会、日本理科教育学会等で報告する。 新型コロナウイルス感染症への対策による、中学校の授業時間の確保が難しく、特に、総合的な学習の時間は全国的にも削減される傾向があるので、授業実践を充分に実施することには困難が予想される。そのため研究機関の延長についても検討が必要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況:本研究において、行政機関と中学校との連携・イベントの企画・実施を分担する計画であった「地域の色・自分の色」実行委員会が、令和元年度からの大分県行政職員及び教育職員の人事異動により実質上、機能しなくなった。そのため研究代表者が直接研究協力校との打ち合わせをしなくてはならなくなり、研究のスピードが大幅に鈍化した。大分県立美術館を主体とした中学生向けのイベントは、実行委員会が主導的に企画・実施し、そこでデータを収集する計画であったが、そのイベントが実施できなくなり、その費用が残となった。また、同実行委員会の仲介によっていた研究協力校の一つから協力が得られなくなり、研究のための授業実践が半減し、それに伴う経費が使用できなかった。 翌年度分としての使用計画:実施できなかった美術館との連携による研究協力中学校とのイベントについて、美術館と直接連携し、企画を再検討し実施する。また、研究協力校が半減したことについては、その分の実践を現在共同研究中の中学校にそのままシフトすることはできないので、時間数を増やすことなく新たな工夫を付け加えることで実践とデータ収集を遂行する。そのため当初計画にはなかった新たな教材開発費として使用する。
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