中学校の総合的な学習の時間を核として、美術と理科をつなぐ教科横断型のカリキュラムの開発を目指した。最終年度となる令和5年度は、前年度までの授業実践を改良し、授業の担当教員が変わっても、実行可能な授業プランを構築した。すなわち、陶芸作品の制作活動を通して、アートとして美術の授業で、地域の特産物を反映した皿をデザインし、その絵付けを行うこと、サイエンスとしての理科との関わりでは、絵付けの釉薬による酸化還元反応、釉薬の成分である鉱物の学習を結びつけた。教科横断型の授業では、関連する教科間の授業実践のタイミング等マネジメントに課題が生じることが多いが、本研究の実践では、年度を超えた授業実践でも生徒の意識が継続する可能性を示唆できた。1年生で絵付けをした皿を2年生になって受け取った際のアンケート調査では、絵付け直後よりも理科の学習への関心が高まっていることが示された。これにより、異なる教科間での連携において、実施時間が開いても学習効果が期待できる可能性が示唆された。 本研究の始まりでは、このような授業計画の発想はなかった。教科横断型のカリキュラムとして、九州国立博物館館長や世界農業遺産協議会会長による講演活動の教育的効果を検証した。しかし、COVID-19の影響により当計画の遂行が困難となり、計画を作り直した。そこで、研究協力校との意見交換により、理科の授業での問題提起や話題提供につながるよう、美術の授業で創作活動を実施することとした。変更1年目は理科の授業で光と色の関係について授業を実施したが、美術教育との有効な関連を明らかにすることができなかった。そこで、2年目は、美術の授業を計画し直し、理科の化学変化と美術の陶芸を結びつけ、皿への絵付けを主とした授業を計画し、3年にわたる実践により授業内容を改善することで、所記の成果を得ることができた。
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