研究課題/領域番号 |
18K02944
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
野崎 健太郎 椙山女学園大学, 教育学部, 准教授 (90350967)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然災害 / 学校 / 避難所 / 水 / 自然水 / 水量 / 水質 / 浄化 |
研究実績の概要 |
豊田市立梅坪小学校区で災害時に利用可能と思われる自然水は、矢作川支流の籠川と矢作川本流である。本研究では採水時の安全を考慮して、籠川の利用を第一候補とし、比較対象として矢作川を用いた。2019年1月から2020年3月まで17回の調査を行った。水量は平水時で1~2トン/秒であり十分であった。水質の基礎情報は、pH 7、電気伝導度12~15 mS/mであり、水道水源となる矢作川に比べて、やや溶存物質が多い傾向にあったが、健康上の大きな問題点は観察されなかった。毒物に関しては測定していないが、魚類や水生昆虫が豊かな河川であり、事故も報告されていないことから問題は無いと判断した。大腸菌は100~600 cfu/mLで検出され、河川水をそのまま利用することはできないことが明らかになった。これらの情報は小学校校長および地域自治区の区長に伝達した。地域を対象とした報告会を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大により断念した。 名古屋市星が丘小学校の水源としては、ため池である新池と平和公園里山の森を流れる小川が候補を候補とした。いずれも水質的には、そのまま利用することは困難であった。そこで、簡易のろ過装置を自作し、浄化を試みた。当初は筒状の浄水器を用いたが、ろ過速度が遅く実用に耐えなかった。そこで、原水をタオルでろ過し、そのろ過水を粉末状の活性炭とともにボトルに入れて振ったところ清澄な水が得られ、大腸菌の密度も0~5 cfu/mLまで低下した。COD濃度もほぼゼロとなり、この手法の有用性が確認できた。 大腸菌の過熱による滅菌効果は、50℃でほぼ死滅することが明らかになった。災害時は、火を長時間用いることが困難であり、加えて沸騰まで熱することは燃料の確保から難しい。本実験の結果、沸騰の半分程度の低温で死滅することが明らかになり、避難所の安全確保上、重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、郊外と都市部の2つの小学校区を対象として、自然災害時に避難所で欠乏する可能性の高い飲料水と生活水を自然水で賄う可能性を探ることが目的である。これまでの2年間の研究によって、郊外では水量、水質ともに自然水を利用する判断に必要な科学的な情報が集積された。一方、都市部では、河川水の利用が困難であり、公園に設置された、ため池の水利用が必要になることがわかった。ただし、2年目の研究で簡易な浄化法が確立されたため、実際の水利用は難しい事ではない。 本研究の新たな困難は、自然水利用に対する人の心理的な壁の存在である。水質的に安全が確保されていることが示されても、その数値は、水源の印象をぬぐい去ることは困難であった。豊田市立梅坪小学校区で地域の方に研究結果を照会した時には、かつて川で泳いだ経験のある方は、抵抗感が低いが、年代が若くなると壁が高いと感じることが多かった。この自然水に対する心理的な抵抗感を下げる工夫が見つけられなかった。これが研究は、(3)やや遅れている回答した根拠である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究の最終年度となり、これまでのデータで不足分を補い、わかりやすい資料を作成する。作成した資料をweb配信、あるいは直接配布し、地域防災の1つの情報として役立ててもらうことを目指す。昨年までの研究で明らかになった自然水を利用することに対する心理的抵抗感の低減もとりくむべき課題である。 水源となり得る自然水の調査は、日変化の観測が行われていないので、豊田市立梅坪小学校区では矢作川支流の籠川で実施する。測定項目は、特に大腸菌とCODの変化に注目する。自然水の浄化法については、昨年度、試験的に市販の携帯浄水器の性能比較を行った。この試験をもう少し拡大し、避難所に備えておくと良い浄水器を選出する。資料は、カラー刷りA4用紙4枚にまとめ、クリアファイル2枚に両面掲示で収めるものを目指す。1枚目は、地域の利用可能な自然水マップとその水質、2枚目は、簡易浄化法の方法をろ過と煮沸によって説明する。これらは災害時の配布資料として用い、その根拠となる数値資料はweb配信とする。合わせて地域の防災活動日に話題提供をさせて頂けるように依頼する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月後半より新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって参加予定の学会大会が中止となり、旅費を使用できなかった。
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