研究課題/領域番号 |
18K02944
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
野崎 健太郎 椙山女学園大学, 教育学部, 准教授 (90350967)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 科学教育 / 湧水 / 小学生 / 理科 / 教育実践 / 水質分析 |
研究実績の概要 |
2022年度もCOVID-19の感染拡大防止のため、学校現場における実践研究の遂行が制限されていた。そこで、これまでの成果を発表するために刷り上がり30頁となる大きな論文を作成し、日本湿地学会の学術雑誌「湿地研究」に発表した。さらに、この論文で確立した教育手法を用いて、体験型の市民講座を実践し、その成果を論文にまとめ投稿した。ここでは、2022年に発表した論文の内容を紹介する。 都市部では、災害時に飲料水、生活水の確保が特に困難である。それを回避する1つの方法として、都市部に存在する湧水の仕組みや性質を理解し、非常時にはそれが水資源に成り得ることを市民に認識させることが重要である。本研究を行った愛知県名古屋市は、北部に丘陵部を抱え、起伏に富んだ地形を持つ。かつて谷津の源頭部であった場所も、その大部分が都市化されているが、現在でも湧水として維持されていることも多い。そこで、そのような湧水の1つである小学校のビオトープを用いて、水質の特性を調べ教材化し、第5学年理科の単元「流水の働き」において授業実践を行った。 名古屋市を含む愛知県は、湧水や地下水の研究が乏しく、その水質の特徴や形成過程は不明であった。例えば、湧水のpHは4~5程度の酸性を示すことが多いが、その理由については解析されていなかった。本研究の結果、名古屋市の湧水は、砂礫層から湧出し、強い風化を受けている砂礫層では、イオン交換による酸緩衝作用が機能せず、雨水の低いpHがそのまま浸透し湧出していることがわかった。それとともに湧水には溶存無機態窒素が大量に含まれていることがわかり、人間活動の影響が大きく作用していることがわかった。 教育実践では、ビオトープの湧水の水質が地層と人間活動に影響されていることを理解させるために、やや本格的な水質分析を組み込み、児童の満足度を大いに高めた。児童たちは身近な湧水の価値を認識した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の開始2年目からはCOVID-19の感染拡大が始まり、その防止対策により学校現場で研究することがほぼ不可能になった。そのため、大学において教材研究を行うことが多くなった。2021年頃からCOVID-19と共生するという考え方が一般にも学校現場にも広がり始め、2022年度はかなり研究を再開することができた。そして補助事業の延期を認めていただいたおかげで、大きな論文のとりまとめ、一般向けの陸水環境に関する教科書の作成を達成することができた。これらの状況から「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度となるため、これまでの研究成果を論文化して公表することに全力を注ぐ。現在、投稿中のものも含めて3本の論文を構想している。具体的には、論文1(投稿中)では市民講座における体験型の水環境教育の実践記録、論文2(準備中)では長さ30 mの小川を模したビオトープにおける短距離での水質変化を用いた教材開発、論文3(準備中)では水環境教育の効果測定になる。論文としてまとめる中で不足となる情報については、勤務先の附属小学校で教育実践を行い取得する。最後に、本研究成果の社会還元として、災害非常時の身近な自然水利用に関する手引きを電子体として作成し、学校現場に配信する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度はCOVID-19が2類のままであり、研究の再開が部分的に留まったため残金が発生した。
|