森林の生物多様性を理解する探究モデルの効果を検証するデータを補うために研究期間を延長した2022年度では、フィールドワークを行わずに利用可能なデータ・情報のみで学習する探究が森林の生物多様性や環境への理解を深める効果があるかを確認する小学生・中学生対象の講座を実施し、そのようなドライラボによる探究でも生態系への理解を深め、環境保全の意識を高めることができることを示すデータを収集した。研究全体を通じた成果は以下のとおりまとめられる。 1)モデルに使用する森林観測データの収集とデータベースの構築:里山二次林については、研究代表者が保有する静岡大学キャンパス内の森林と静岡市郊外にある「しずおか里山体験学習施設・遊木の森」で観測したデータを用いて、里山の変化を予測する探究に使用できるデータベースを構築した。人工林については、分担者が所属する農学部の天竜フィールドの針葉樹人工林で観測されたデータをモデル用に簡略化して立地環境と樹木の成長との関係を探究するデータベースを構築した。 2)モデルの開発:構築したデータベースを使用して人工林を対象に樹木の成長と密度との関係を探究する内容と手法を考案し、学校教育で扱えるモデルの試案を開発した。 3)モデルを使った学習の実践と効果の検証:森林の構造、二酸化炭素蓄積量、野生動物による利用、里山二次林と人との関わり、樹木の成長と密度との関係などを題材に、小中高の児童・生徒が主体的に探究する講座を実践した。これらの実践により、小学生にはやや難易度が高い要素があることを解決する必要があるが、中学生・高校生については構築したデータベースを使ったモデルを学校での探究に応用できることを確認した。 以上の成果により、二次林・人工林を対象に構築したデータベースを用いた探究モデルの作成とその学習効果の検証を終え、これまでに原著論文3、図書1で成果を公表した。
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