2022年度は2021年度に引き続き、これまでに国際会議等で発表した研究成果をさらに発展させることにより、論文作成と論文投稿に取り組んだ。 今年度は、今までの実践に関する分析と考察をもとに、小学校教師を志望する日本の教員養成大学の学生を対象として、授業研究をもとにした職能成長プログラムを実施する際の条件と制約について考察を行った。ここでは、教授人類学的理論に基づいて、3つの次元(制度的、教育的、個人的)から、本プログラムを実施するためのさまざまな条件と制約を整理して分析した。具体的には、教員養成大学の一つの授業の一環として行われた活動―附属学校において開催された算数・数学科授業研究会に学生が参加(研究授業や研究協議の参観)する活動―を通して、学生自身が作成した学習指導案の内容や構成が授業研究会の前後でいかに変容したかに焦点を当てて分析を行った。その結果,本プログラムに現れた制度的な側面からの条件や,授業研究と職能成長を共存させることの困難性の中での制約を示すことができた。また、学生の学習指導案作成に関わる活動に対する個人的な制約は、他の側面(制度的または教育的)の条件や制約の影響を受けていることも分かった。本研究は、授業研究をもとにした職能成長プログラムにおける教師(小学校教員志望の学生を含む)の実践と知識を形成したり妨げたりする要因について、教授人類学的理論の視点から、より深い理解が得られたと考える。本研究の成果については、数学教育関係の国際ジャーナルに投稿し,審査を経て掲載された。 本研究全体を通して、授業研究に関連した小学校教員志望の学生の学習機会や学習成果について、教授学的内容知やメタ教授学的転置理論の視点から明らかにすることができた。さらに、本研究は、授業研究をもとにした職能成長プログラムにおける条件と制約を明らかにするための方法論についても貢献できたと考える。
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