研究実績の概要 |
高等学校学習指導要領解説では, 「生物の体内環境の維持について観察, 実験などを通して探究し, 生物は体内環境を維持する仕組みがあることを理解させ, 体内環境の維持と健康との関係について認識させる。」とされている。しかし, 現行のすべての教科書では, ホルモンの分泌による体内環境の仕組みはイラストレーションで示されているのみで, 実物の生物教材はほとんど例がない。本研究では, メダカの幼魚から産卵開始前後の性ホルモンの分泌による卵形成を可視化した教材を開発し, それを活用した発展的探究活動を考案して実践することを目的とする。 今年度は, 性成熟までの成長過程におけるヒメダカの性ホルモンの分泌および卵巣内の卵母細胞の発達段階が安定的に推移する標本を得るため, 孵化後から生後2ヶ月までのヒメダカをより安定的に飼育する条件を検討した。飼育容器の種類等を変え, より生存率の高い飼育条件を見出した。また, 孵化後から生後1ヶ月までの成長段階ごとの雌をサンプリングして組織切片標本を作製し, 卵巣内の卵母細胞の発達段階の推移を観察した。その結果, 孵化後10日目以降の稚魚の卵巣において,発達段階が進んだ卵母細胞が観察された。成長した卵母細胞は染色の度合いが異なるため、発達段階の違いを容易に認識することが可能であると考えられる。また,孵化後50日目前の幼魚において,卵巣構造の変化も見られた。メダカは孵化後50~60日目に産卵が見られるとされていることから, 性成熟と卵巣の発達との関係を可視化できることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通り, 幼魚の成長段階ごとに雌をサンプリングし, 組織切片標本を作製した。卵巣内にどのような変化が起きているのか, 卵母細胞が発達していく様子を組織学的に観察した。卵巣の構造, 卵母細胞の大きさや発達段階の変化の全体像を見い出すことができた。
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