研究実績の概要 |
高等学校学習指導要領解説では, 「生物の体内環境の維持について観察, 実験などを通して探究し, 生物は体内環境を維持する仕組みがあることを理解させ,体内環境の維持と健康との関係について認識させる。」とされている。しかし, 現行のすべての教科書では, ホルモンの分泌による体内環境のしくみはイラストレーションで示されているのみで, 実物の生物教材はほとんど例がない。本研究では, メダカの稚魚から産卵開始前後の性ホルモンの分泌による卵形成を可視化した教材を開発し, それを活用した発展的探究活動を考案して実践することを目的とする。 今年度は, 性成熟までの成長過程におけるヒメダカの性ホルモンの分泌, 卵巣構造および卵母細胞の発達段階が安定的に推移する標本を得るため, 孵化後から生後40日後までの仔稚魚がより成長する条件を検討した。飼育密度等を変え, より簡易かつ健常に育つ飼育条件を見出した。生育した稚魚を用いて, 孵化後から生後1ヶ月までの成長段階ごとの雌の組織切片標本を作製し, 卵巣構造および卵母細胞の発達段階の推移を観察した。その結果, 孵化後30日目までの稚魚において, 卵巣構造の変化が様々な組織で観察された。卵巣構造の変化は形態的に容易に識別できるため, 卵巣の発達段階の推移を容易に認識することが可能であると考えられる。メダカは孵化後50~60日目に産卵が見られるとされているが, 卵巣は産卵前に構造的に様々な準備が行われていることが分かった。よって, 性成熟における卵巣構造の変化を可視化する教材を作製できる可能性が示唆された。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最終年度は, 各種性ホルモンの分泌の分析および卵巣内の卵母細胞の発達段階の観察に予想より多くの経費が掛かると見込まれたため, 次年度の経費の支出を抑えた。最終年度は, 仔稚魚から性成熟までの成長段階ごとにヒメダカの雌の組織切片を作製し, 性ホルモンの分泌後の卵母細胞の発達段階を可視化した標本教材を作製する。
|