研究実績の概要 |
高等学校学習指導要領解説では, 「生物の体内環境の維持について観察, 実験などを通して探究し, 生物は体内環境を維持する仕組みがあることを理解させ, 体内環境の維持と健康との関係について認識させる。」とされている。しかし, 現行のすべての教科書では, ホルモンの分泌による体内環境のしくみはイラストレーションで示されているのみで, 実物の生物教材はほとんど例がない。本研究では, メダカの稚魚から産卵開始前後の性ホルモンの分泌による卵形成を可視化した教材を開発し, それを活用した発展的探究活動を考案して実践することを目的とする。 今年度は, 性成熟までの成長過程におけるメダカの卵巣構造および卵母細胞の発達段階が安定的に推移する標本を得るため, 孵化後から生後30日後までの仔稚魚が個体間で差が少なく成長する飼育方法を確立した。また, 生育した稚魚を用いて, 孵化後から30日までの成長段階ごとの雌の組織切片標本の作製方法(固定・染色方法等)を検討した。孵化後30日目までの雌の仔稚魚の成長過程における卵巣内の変化を観察した結果, 卵巣の卵巣腔の形成過程, 背側卵巣腔上皮のめり込んだ構造や腹側のくぼみの推移, 左右2葉の形態の変化および融合過程, 卵母細胞の発達段階の変化が観察された。卵巣構造および卵母細胞の発達段階の変化は形態的に識別できるため, 成長段階から卵巣の発達段階を認識することが可能であると考えられる。よって, 孵化直後から性成熟までの過程で, 卵巣の発達段階を可視化する教材を作製できると考えられる。
|