研究実績の概要 |
クルックス管から漏洩するX線の安全管理について、2019年度に行った第二期実態調査の結果から暫定ガイドラインに準拠した実験(放電極の距離20mm, 生徒との距離1m以上、実演時間の合計10分以下)を行う場合、ほとんどの装置について国際的な免除レベルである実効線量 10μSv/年を下回ることが明らかになった。しかしながら最も漏洩線量の高い装置では 42μSv/年 相当の線量と評価され、全国にはより線量の高い装置が存在する可能性も否定できない。 このため、全国の理科教員の手で実施可能なスクリーニング手法の開発を行った。静電気の学習に用いられる箔検電器は、帯電により金属箔が同極性の電荷により開くが、放射線により空気が電離されると逆極性の電荷が引き寄せられ、中和して次第に閉じていく。この速度は空気の吸収線量に比例し、電離箱で測定した線量率によって検量線を作成することが出来る。様々な装置で確認したが3割程度の誤差の範囲で同一の検量線を使用できることが明らかとなった。これにより、ある程度高い線量が確認された場合にのみガラスバッジなどによる正確な測定を行う、というスクリーニングが可能となった。 また、日本科学技術振興財団が運営する放射線教育支援サイト「らでぃ」では、簡易な線量計である Kind-mini の無償貸し出しを行っている。通常の1cm線量当量率の測定結果は実際の低エネルギーX線の線量率とかけ離れた値を示すが、計数率を実際の線量率で校正すると、70μm線量当量率で 600μSv/h 以下であれば、直線的な検量線を作成出来た。Kind-mini は簡素化した校正を行っており、スクリーニングに使用することが可能であることが明らかとなった。 これらの成果について、中学理科の教科書を出版する5社のうち4社で教師向け指導書の執筆を行っており、残りの一社でも暫定ガイドラインについて掲載される。
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