研究課題/領域番号 |
18K02969
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
石川 元康 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (40279766)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境教育 / カワノリ / 絶滅危惧種 / 生育環境条件 / 環境保全 / 淡水藻類 |
研究実績の概要 |
研究目的の1つはカワノリの人工養殖技術の確立である。現地調査によるカワノリ生育環境条件の把握,人工養殖実験を行うことで生育環境条件を定量化する計画である。2つ目はカワノリを環境学習の素材として利用したカリキュラム開発を行うことである。本種は古くから食用とされ,希少価値の高いものであることから,幅広い学習効果が見込まれる研究である。今年度の研究実績は以下の通りである。 ①カワノリの人工養殖技術の確立:カワノリ胞子を付着させたコンクリート板を用いて養殖実験を行った結果,カワノリの発生が確認できなかった。昨年度の反省から胞子付着前に生きているカワノリ胞子が放出されているかを顕微鏡で確認し,表面に珪藻類が付着しないようメンテナンスした。しかしながら,現状では葉体が出現できず,カワノリの生育を阻害する要因は何か,胞子が基盤に定着しなかった原因など検討の余地がある。 ②カワノリ生育地の現状調査:富士宮市において継続実施している「芝川ノリ調査」では,市内16地点中6地点でカワノリの生育が確認され,昨年度よりも生育地点は減少した。河川流量が多いことによる葉体の流出の影響が考えられ,今後の統計解析により,河川水量,日照時間,付着基盤との関連をまとめる予定である。 ③科学・環境教育カリキュラムとして活用するための教材化の研究:富士宮市立白糸小学校4年生9名を対象に2020年10月から2021年1月までの計4回の環境教育を行った。第一回はカワノリの生態や歴史と養殖実験準備,第二回はカワノリ生育地の見学と標本作成,第三回は水生昆虫による簡易水質評価,第四回は試食会とまとめを行った。受講者達は近隣小・中学校の総合学習交流の場において学校代表として発表する機会があり,『幻の芝川ノリの復活をめざして』と題してプレゼンテーション,劇なども入れて分かり易く伝え,質疑応答にも対応して高い学習効果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究目的の1つであるカワノリ人工養殖に関する進捗としては,昨年に引き続きカワノリのタネとなる胞子の放出条件の解明が課題である。現地調査による葉体採取と定期的な現地観察と実験が必要である。 全国各地のカワノリ生育環境調査では,カワノリが成長する夏季から秋季にかけての期間を調査時期と計画していたが,新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛要請により,関東地方の調査地点である群馬県青倉川,埼玉県大血川,東京都多摩川源流部,四国地方の調査地点である徳島県勝浦川・那賀川,高知県物部川,仁淀川,四万十川水系,さらに九州地域の筑後川,大野川,五ヶ瀬川,耳川,菊池川,緑川,球磨川水系におけるカワノリ生育調査は中止とした。これに伴って研究期間の延長申請を行い,遅れているカワノリ生育環境調査を実施予定である。 カワノリを題材とした科学・環境教育カリキュラムとして活用するための教材化の研究については,計画通り静岡県富士宮市の小学校の総合学習において4回の学習課題を設定して教材を作成することができた。今年度は複数の学校で行われている総合学習の交流の場である「富士山麓サミット」において,研究対象の児童達が発表する機会が得られた。学校代表として『幻の芝川ノリの復活をめざして』と題した発表を行うことで,科学・環境教育カリキュラムの学習効果,知識の定着が高まったことを確認できた。また,この交流を通して本プログラムが富士宮市芝川流域の他の小中学校に認知され,当初計画通り科学・環境教育教材として普及することに期待が持てた。市の教育委員会と連携して,一時的な学習機会として終わることなく,持続的な利用できるようカリキュラム開発を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
人工養殖技術の確立に関する今後の推進方策は,胞子放出条件の要因を調べる実験と胞子の定着を確認するために,葉体採取時期と胞子放出の関係を水温,日照条件の環境条件を変化させた実験を行う。 カワノリ生育地の現状調査に関する今後の推進方策は,昨年度は全国の感染症対策で他県への移動制限があり実施できなかった関東地域の利根川,荒川,多摩川水系源流域,四国地域の勝浦川,那賀川,物部川,仁淀川,四万十川水系,さらに九州地域の筑後川,大野川,五ヶ瀬川,耳川,菊池川,緑川,球磨川水系におけるカワノリ生育調査を計画している。引き続き,環境省が提供している公共用水域水質測定結果や現地水質調査とヒアリング調査結果とを比較して,カワノリが減少したリスク要因を統計的に解析し,全国的にカワノリ生育地が減少している原因を検討する予定である。 科学・環境教育カリキュラムとして活用するための教材化の研究に関する今後の推進方策は,静岡県富士宮市の小学校の総合学習において「芝川ノリ学習」を継続実施する。昨年度は近隣小・中学校6校をリモートで繋いだ総合学習の交流の場である「富士山麓サミット」において,学習者達が学校代表として発表することで,学習者達の知識の定着と学習意欲向上を得ることができた。学習成果を発表するという場が与えられることによって,学習効果が高まることが確認できたとともに,本プログラムが他校へ認知され,他校への普及が予想される。そのため,従来の成果を取りまとめた電子教材の作成を行う。この教材は,現在感染症拡大の対策として対面で授業ができない場合のコンテンツとして活用が見込まれるものであり,文部科学省GIGAスクール対応を見越したe-Learning教材や遠隔授業に対応したコンテンツ配信を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出制限を鑑み,カワノリ生育地域の現地調査を計画通りに進めることができなかった。そのため,研究期間の延期を申請し,感染症の状況を考慮して調査実施を行う。 本研究課題の目的の一つであるカワノリ生育地の現状調査として,昨年度実施できなかった関東地方の調査地点である群馬県青倉川,埼玉県大血川,東京都多摩川水系,四国地方の徳島県勝浦川・那賀川,高知県物部川,仁淀川,四万十川水系,さらに九州地域の筑後川,大野川,五ヶ瀬川,耳川,菊池川,緑川,球磨川水系での調査のために国内出張旅費として使用する計画である。
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備考 |
日本大学国際関係学部生活科学研究所 webシンポジウム「環境と生活」講演,令和2年12月7日(月)~12月21日(月)
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