研究課題/領域番号 |
18K02975
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荻野 和子 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (40004353)
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研究分担者 |
荻野 博 東北大学, 理学研究科, 名誉教授 (00004292)
渡辺 尚 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20756522)
猿渡 英之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (30221287)
栗山 恭直 山形大学, 理学部, 教授 (50225273)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロスケール実験 / 化学実験 / SDGs / ESD / 電気分解 / 分子機械 / ロタキサン |
研究実績の概要 |
1.前年度に引き続き「持続可能な社会」という概念の理解につながるマイクロスケールケミストリー(MC)教材の開発を行った。とくにエネルギーについての教材を発展させ、いろいろなかたちのエネルギー(化学、電気、力学、光など)とその相互変換を電池・電気分解の実験を通じて実感させるプログラムを組み立てた。また、環境分析、種々の気体の実験を軸に温室効果ガス、生命と酸素などと関係付けた。これらの教材は、宮城県大和町、山形県東根市、寒河江市、山形市等で小学生、中学生、一般市民対象実験教室で、青森北高校、山形工業高校、東京学芸大附属高校での授業で実施し教育効果が高いことがわかった。香川大学教育学部学生対象に2020年1月「電気分解と電池」の実験研修を行った。2019年10月にベルリン市Romain Rolland Gymnasiumで高校教員対象研修で実施したところ、「興味を惹く」、「短時間でできる」、「環境にやさしい」と讃辞が寄せられた。 これらの成果は2019年6月南アで開催された第10回国際マイクロスケールケミストリシンポジウム、2019年7月マカオで開催された第10回中国マイクロスケールケミストリー会議(10th National Conference on Micro-Scale Chemistry)での招待講演で発表した。また8th NICE(台湾, 2019年7月)、2019年度化学系学協会東北大会(山形、2019年7月)等の国内外の学会でも発表した。
2.化学における最先端研究の成果を身近なものとして理解することは教育上極めて重要で本研究の一つの柱である。最先端化学研究の一例として分子機械に利用されているロタキサンを取り上げた。分子の糸にシクロデキストリンの輪を通し、糸の両端に2種の金属錯体をつけたロタキサンの合成を行った。さらに多様なロタキサン合成の系を開発し、教育に役立てていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.これまでに開発してきたMC実験をSDGs、ESDに適した形―「持続可能な社会」、「水素社会」などの概念の理解につながる―に発展させることができた。それらの教材を小学生から市民まで広いさまざまな対象の実験教室、国内外の教員研修で試行したところ興味・関心を集めることができた。
2.先端科学技術の理解につながる教材として分子機械の部品に相当するロタキサンをとりあげ、まず合成を試みたが、2種の金属錯体をストッパーとするロタキサンの合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1.「電池と電気分解」のMCは、小学生―高校生ばかりではなく、教員、一般市民までを魅了するすぐれた教材である。これまでこのMCを利用するプログラムをいろいろ組み立ててきたが、さらに環境分析や酸素濃度測定関連の教材と組み合わせるなど新しいプログラムを開発する。それらを実験教室、授業等で試行して完成させる。
2.先端科学につながるテーマ及び高度な内容として、分子機械の部品ともいえるロタキサンの合成に取り組んできた。すでにシクロデキストリン(CDX)を環状分子とする新しいロタキサンを合成したが、今後はCDXを他の環状分子にしたり、錯体の種類を変えたりするなどにより、さらに多様なロタキサン合成の系を開発し、教育に役立てたい。
3.学会、教員研修講座等で、発表・実施し普及をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染への対応のため、2020年3月に開催予定だった第100春季年会(於東京理科大学野田キャンパス)が中止になった(ただし、研究発表は行われたとされた)。研究代表者および分担者4名が出席予定だったが、そのための旅費が繰り越された。また、実験教室が予定より少なかったので、消耗品費が繰り越された。 これは2020年度に研究打合せ旅費、成果発表旅費、教員対象研修講座、小中高生対象実験教室の消耗品購入に使用予定である。
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