研究実績の概要 |
中学校における放射線の学習については, 2017年改訂の中学校理科学習指導要領から, これまでは中学3年生のみの扱いであったが, 新たに中学2年生でも扱うようになった。中学生が放射線を正しく怖がることができるためには, 教員が生徒に放射線を科学的にきちんと理解させることが求められる。そこで, 令和2年度は昨年に引き続き和歌山大学免許更新授業および和歌山市内の中学校で放射線に関する実験やアンケート(対象:中学1年生)を実施した。アンケートの質問内容は以下の通りである。 ①あなたは放射線と聞いて具体的に何を思い浮かべますか ②あなたは放射線を危険または怖いと感じますか ③私たちの暮らしのさまざまなところに放射線が関わっていますが, 次の6つについてどの程度知っていますか(1.私たちは宇宙から放射線を受けている 2.私たちは大地から放射線を受けている 3.私たちは空気から放射線を受けている 4.私たちは食べ物から放射線を受けている 5.放射線を多く放出する温泉がある 6.レントゲン検査では放射線を受ける) 質問①のアンケート結果から, 放射線と聞いてまず身近な医療現場で使われているX線や原子力発電, 原子爆弾が思い浮かぶと回答している生徒がほとんどであった。次に質問②の結果から, 放射線を危険だと思わない生徒は一人もおらず, 原発事故を危険だと思う根拠として放射線を挙げている生徒が半数以上いた。質問③について, 1-5は自然放射線, 6は人工放射線である。どちらも身近にあるが, 自然放射線を認識している生徒は人工放射線を認識している生徒に比べかなり少ないことがわかった。このことから, 身近な自然放射線を知ることが放射線の正しい理解に不可欠であると考えられる。よって, 実際に中学生が測定器を持って身のまわりの放射線を測定することで放射線への理解をより深めることができると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度はコロナ感染症拡大の影響で, 近隣の学校での放射線に関する出前授業やアンケートをほとんど実施することができなかった。一方, 令和元年度実施した免許更新授業や中学校で実施したアンケートの集計は予定通り行うことができた。そして, これらの得られたデータをまとめ, 日本理科教育学会全国大会で発表した。よって, 本研究はやや遅れているが予定通り進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も近隣の中学校や高等学校で放射線に関する出前授業やアンケートを行う予定であるが, コロナ感染症再拡大のため出前授業が困難になる可能性がある。そこで, 和歌山大学において大学生や大学院生を対象とした放射線に関する授業や実験を実践したいと考えている。さらに, 放射線に関するアンケートを実施することで中学生や高校生と大学生, 大学院生との知識や理解の違いを考察したいと考えている。
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