研究課題/領域番号 |
18K02980
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大西 義浩 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (00321480)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / パフォーマンス指数 / 学習到達度 |
研究実績の概要 |
2020年から小学校においてプログラミング教育が必修化されるなど,初等中等教育の現場に,プログラミング学習が導入されつつあり,様々な教材や教育方法が開発・提案されている。しかしながら,その評価方法は,できた,できないの二値的な判断になりがちであり,プログラミング学習の到達度に応じた定量的かつ詳細な評価方法が確立されているとは言い難い。本研究では,プログラムの「はたらき」を数値化した「パフォーマンス指数」によりプログラム学習者の到達度を評価できる教材を開発し,小学校高学年および中学校でのプログラミング教育に使用することを目指すものである。本研究で開発する教材のきめ細かい評価による個に応じた学習支援や学習者の主体的な取り組みなどが可能になり,プログラミング学習の効果向上に貢献することを狙いとする。研究期間全体の課題として(1)教科内容に即した教材の検討,(2)パフォーマンス指数の算出方法とプログラム難易度との関連の考察,(3)プログラム作成者の学習到達度とパフォーマンス指数との関連の考察,の3つを掲げた。 平成30年度は,主に(2)の課題について検討し,ライントレースロボットを題材とした教材およびおそうじロボットを題材とした教材により大学生を対象とした試行を行った。ライントレースロボットの実践では,ロボットが走行するコースをプログラムの難易度に応じて選択できるようにし,難易度の高いコースを走行するとゴールタイムが早くなることを確認した。おそうじロボットの実践では画像情報から走行軌跡を記録し,難易度の高いプログラムのほうが課題の達成率が高まることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,主にパフォーマンス指数の算出方法とプログラム難易度との関連の考察を行い,ライントレースロボットを題材とした教材およびおそうじロボットを題材とした教材による実践を通じて検討した。ライントレースロボットを題材とした教材では,ゴールタイムをパフォーマンス指数として定義することで,また,おそうじロボットを題材とした教材では,フィールド内の既走行部分の面積をパフォーマンス指数として定義することで,難易度の高いプログラムによって結果が変わることを確認できた。これらのことはこれまで感覚的に把握していたことであるが,平成30年度の研究によって明らかにすることができた。これらの成果を論文投稿し,採録されることが決定している。 また,教科内容に即した教材についても,小中学校の現職教員と検討を進めており,次年度以降の教材開発につながる情報を集められている。以上のことから,当初の計画どおりおおむね順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に取り組んだ実践は,大学生を対象とした試行であった。今後は「教科内容に即した教材の検討」として,小学生や中学生が作成可能なプログラミング環境を用いたプログラミング教材を検討する。コンピュータ内で完結するシミュレーションベースのものや実物を動かす実験ベースのものの双方を候補とする。学校教育の中での使用を念頭に置いているため,算数,理科,技術等の教科内容に即した複数の教材を検討する。ここでは,学年ごとの単元進行に詳しい小中学校の現職教員に助言を頂きながら開発を進める。 また,「パフォーマンス指数の算出方法とプログラム難易度との関連の考察」として,平成30年度は,ライントレースロボットを題材とした教材およびおそうじロボットを題材とした教材のように,何か一つの指標から指数を計算するパターンのみを考察したが,二つ以上の指標から一つの指数を計算するものなども考察する。二つ以上の指標から一つの指数を算出する際には,それぞれの指標をどの程度重視するかという重み係数の設定などが重要になるため,数値シミュレーションおよび数学や情報工学の考え方も取り入れながら分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
試行実験の学生協力者に謝金を計上していたが,授業内で試行実験を行ったため,謝金が生じなかった。必要な試行実験は次年度以降に繰り越す予定である。
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