児童・生徒が日常生活や他教科等との関連を実感しながら科学的に探究する学習活動を行うために,九州を対象とした自然災害および大気環境の教材開発を行うとともに,多忙な学校現場の教員が授業で公的機関の情報を地域教材として有効活用するための手法を検討することを目的として研究を行った. 環境や自然災害に関する学習素材・教材はできるだけ新しいものであることが望ましいため,前年度に引き続き,自然災害に関する情報や大気環境に関するデータの収集や観測・解析を進めた.自然災害については,2020年7月に発生した令和2年7月豪雨による球磨川流域の水害関連の情報について調べて,教材化を検討した.小学校教員免許状取得に関わる理科の指導法の科目を2019年度に受講した,主に文系学科の教育学部生を対象とした自然災害に関する認識の調査では,熊本地震の体験の有無とハザードマップ閲覧経験の有無に関係性はみられなかった.2015~2018年度にアンケート調査した中高の理科の教員免許状取得に関わる理科の指導法の科目を受講していた理学部や教育学部理科の受講生と同様に,単に災害を体験しただけでは防災・減災に関わる行動につながらないため,自分事として捉えて考えさせる体験が必要不可欠であることがわかった.また,小学校においては社会科との関連を充実させることが重要であることがわかった.大気環境について,通常では夏季にはあまり高濃度とならない微小粒子状物質が8月に九州や沖縄において高濃度になった事象について,公的機関のデータや情報,衛星画像などを用いて調べ,その教材化を行った.また,パソコンなどを使った解析を行わなくても生徒が大気環境について探究的な活動を行う際に利用しやすいと思われるオープンデータの活用について学会発表を行った.
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